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チリ大統領選=バチェレ氏が2度目の当選=対抗マッテイ氏を圧倒=議会でも左派連合が過半数超=教育改革めぐり銅産業は?

ニッケイ新聞 2013年12月17日

 チリの大統領選挙の決選投票が15日に行われ、2006〜2010年に大統領を務めた、野党連合(ヌエーヴァ・マジョリア)代表のミチェレ・バチェレ氏(チリ社会党)が、現与党連立派閥(アリアンサ)代表のエヴェリン・マッテイ氏(独立民主連合)を大差で破って当選し、4年ぶりに職務復帰を果たすことになった。16日付伯字紙が報じている。

 バチェレ氏は11月17日に行なわれた一次投票でも既に過半数近い得票数を獲得していたが、その勢いは決選投票まで続いた。バチェレ氏の得票率は62・2%で、この数字は、90年にアウグスト・ピノチェト大統領による軍事政権終了で実現した民生復帰後のチリ大統領選では最高だ。
 ブラジリア時間17日午後8時20分(チリで同7時20分)頃、マッテイ氏は敗北宣言し、「バチェレ氏に幸あれと心から言いたい。チリを愛する人なら誰もがそう願うもの」と語った。
 また、今回の選挙から国民の投票の義務化が解かれたが、それに伴う投票率の低さも目立った。一次投票の投票者は670万人で、同国の有権者1350万人の過半数をわずかに上回る数だったが、今回は570万人でそれをさらに下回った。アリアンサ側支持者の中には、そのことを指摘し「バチェレ氏の勝利は国の意思を反映していない」とする人もいた。
 だがバチェレ氏は「法が〃投票は国民の自由意志〃と定めている限り、民主主義的に有効だ」と、みずからの勝利を肯定した。
 また、同時に行なわれた下院と上院の選挙でも、ヌエーヴァ・マジョリアは下院68人、上院21人と、議会内過半数(下院61人、上院20人)を上回った。
 今回のバチェレ氏圧勝は、国民の変革を求める声を反映するものだった。チリ現政権は、セバスチアン・ピニェイラ大統領の下、年平均5%の経済成長を遂げていたが、貧富の差が拡大し、生活の質の向上を求める声が止まず、2011年には教育の無料化を求め、大規模な学生デモも起きていた。
 バチェレ氏は「司法・教育・憲法」の改革を選挙公約として掲げ、就任後に着手する予定だが、その改革に対し、同国の中心産業である銅部門は懸念を隠せないという。
 同国の銅産業は世界の生産高の3分の1を占め、チリの経済の5分の1を占めているが、学校無料化を進めるならば、同部門に課される税金が増えると見られているからだ。加えて、新政権では、銅産業に対する国外からの投資を促進するため、より多額のロイヤルティの支払いを免除してきた法律を撤廃するとも見られている。この法律は国内の開発事業にも支障を来たしていた。ブラジルが投資を行なうには好都合ではある。
 また、バチェレ氏の新政権は、同国北部の国境地帯の領有権をめぐり、自国の土地であることを主張しているペルーやボリビアと、来年早々からはじまる国際裁判で争わなくてはならなくなる。