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不動産税35%値上げに待った!=原田清弁護士「憲法違反だ」=どうなる来年のIPTU=年内に市が上告の可能性も

ニッケイ新聞 2013年12月18日

写真=「IPTUの最大35%値上げは違憲」とする原田清弁護士











 サンパウロ州高等裁判所の特別機構は11日、サンパウロ市が2014年から予定している都市不動産所有税(IPTU)の値上げを差し止める暫定令を出した。今回の高等裁での審議はサンパウロ州工業連盟(Fiesp)、ブラジル民主社会党(PSDB)などによる憲法違反直訴訴訟(Adins)を受けたものだが、この訴訟には文協評議員会長の原田清弁護士が直接関わっていた。サンパウロ市側は今後これを不服として最高裁に上告するとみられるが、この値上げについて憲法違反を主張する原田弁護士に、法的な見解を聞いた。

 サンパウロ市は、2014年からIPTUを一般家屋で20%、商用家屋で35%を上限に値上げすることを定めた法案を提出し、10月29日にサンパウロ市市議会が承認した。
 原田氏によれば、同法案に対してPSDB、Fiespのほかサンパウロ商業協会、サンパウロ商業連合(Fecomercio)に加盟する29組合が憲法違反直訴訴訟をし、高等裁判断はこの訴えに応えたものとなった。
 原田氏はこの値上げは「理に適っていない」とする。「35%という数字は2009年から12年の期間の値上げだと言うが、08年から12年の国内総生産の伸び幅は16・8%。国内総生産をはるかに上回る値上げ率を受け入れられるはずがない」と主張し、「インフレ率に従い6%ほどにするのが妥当」と続けた。
 ただし、暫定令だけに「市役所の申し立てでいつでも取り消される可能性がある」と原田氏はみる。州検察局はこの法案通過を問題視し、11月5日にサンパウロ州第7地裁が差止め命令を出していたが、サンパウロ市側が高等裁に異議申し立てをし、同月13日に差し止めが解かれていた。
 原田氏によれば、この暫定令と高等裁判所の判事らの意見文が官報に掲載され次第、上告が可能になる。そこから市がすぐにでも動く可能性があり、年内は予断を許さない状況だ。「ナタルだが、落ち着いて過ごせない」と原田氏はこぼす。
 通常ならサンパウロ市は年初には市民に新年の正式な税額を通達する。そのためには、この28日までに値上げ率を決めておく必要がある。市が最高裁に持ち込めば判決は14年に入ってからしか出ないため、10月に通過した法案通りにIPTUを値上げするのは困難になると予想される。
 また、原田氏は来年から高等裁の長官が変わることもいい方向に影響するとみる。現在のイヴァン・サルトリ長官は、この審議を行った25人の判事の一人で、暫定令に反対の票を投じた3人のうちの一人だった。
 この訴訟には原田氏のほかに、有名弁護士のイヴェス・ガンドラ氏も関わっている。原田氏は行政関係の訴訟に数十年関わってきたことから経験が豊富で、Fiesp会長で来年のサンパウロ州知事選挙戦に立候補するとみられるパウロ・スカッフィ氏に直接呼ばれて裁判の依頼を受けたという。