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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年12月19日

 猫の額ほどの我が家の庭で、今年もゴーヤがなり始めた。東日本大震災後の節電対策用にゴーヤを栽培した人がいたが、我が家もあの年以来、種蒔きと収穫を繰り返している▼葉切りアリのせいで夜中に葉が落ちたのを誰かのいたずらと思い込んだり、熟れて落ちた実から芽が出て慌てたりなど一喜一憂。今年はシュシュも植えたので様子が違うが、葉切りアリは相変わらず、成長点がある軟らかい枝先の葉や茎を切り刻んでいる▼アリに痛めつけられても成長するゴーヤの逞しさに脱帽しつつ、その成長に合わせた棚作りに追われる週末は、「人の才能の芽を摘む」事の怖さも考えさせられる。霜柱が立つ所では麦踏みで麦を根付かせ、獅子は我が子を千尋の谷に突き落とす▼傍から見れば驚く様な事にもやっている側には理由がある事も多いが、叱られたり自分の意見や仕事を否定されたりすれば、痛みを感じ、腹を立てたくなるのは人の常だ。人を育てるつもりの助言や指導が相手の才能や興味を潰す事もある▼植物の成長には日照時間や水、土の状態等の影響も大で、いくら焦っても時が来なければ芽を出す事も実を結ぶ事もない。葉や茎を切り刻まれても育ち、実を結ぶ逞しさは皆が持てればとも考える▼苦味のあるゴーヤは苦手な人も多いが、「酸っぱい物と組み合わせてみたら」との娘の声に、薄切りにして塩で軽く揉み、梅干の果肉と鰹節、醤油で調味してみたところ、持ち寄り昼食会でも「いい組み合わせ」「苦くない」と好評だった▼持ち味を活かすとか適材適所というのは口で言うほど簡単ではないが、一寸した工夫で互いが活かせれば喜びも倍増する筈だ。(み)