〃クリスマス限定〃路上生活者＝プレゼント、寄付品を目的に＝市「子供使って金集めている」

ニッケイ新聞　２０１３年１２月２０日

　カレンダーが１２月になるや否や、サンパウロ市周辺部のアパートの一室に住む家族が、揃って家を出る——。１カ月の間だけ、ホームレスのように路上で生活するためだ。
　路上生活をする場所は、中心部のグリセリオ地区。犯罪発生率が高く麻薬常習者がたむろする場所として知られるが、クリスマスの時期には、一部の人にとっては〃戦略的〃な場所になる。
　「子供の学校が終わったらここに来るの。クリスマスのプレゼントや寄付品をもらうためよ」。主婦のシルベイラ・フェレイラさん（３８）は事も無げにそう言う。
　シルベイラさんとその子供４人に加え、他にも５家族が１カ月間、サンパウロ市東部のサンマテウスの集合住宅地から２５キロ離れたグリセリオで過ごす。毎年この時期になると、心ある人から路上生活者へのクリスマスプレゼントが集まるからだ。中には、サンパウロ市大都市圏内のフェラス・デ・ヴァスコンセーロス市からやってくる家族もいる。
　「ここを通る車が、子供に玩具とか食事をくれるの。中には、後から戻ってきて服を持ってきてくれる人もいるわ。そういうものを買うお金がないからここに来てるの。唯一の方法なのよ」。シルベイラさんによれば、住居のあるサンマテウスでは誰も寄付をしないため、似たような状況に置かれている家庭が多いという。寄付の〃波〃は毎年、通常２５日か２６日に終わり、その後、家族はグリセリオを去っていく。
　高架橋下での路上生活には困難が多い。トイレやシャワーを使いたければ、福祉団体や市役所が出すテント、教会などへ行く必要がある。中にはレンガを積み、アルコールで火をおこして調理をする人がおり、２口の小さなガスコンロとガスボンベを持ってくる人までいる。
　カシア・アパレシーダさん（３６）は、ここでの生活を最も長く経験している。「ここに来始めてから随分経つわよ。二人の娘のうち一人は２０歳になるけど、彼女が６歳のときからだから」と言う。
　行政側はこの状況をどう見ているのか。カシアさんによれば、市役所の職員は既に慣れており、いくつか規則を言い伝えるだけだという。「市役所からは、物を散乱させないようにと言われるだけ。だからこういうものを組み立てて、出るときはきれいに掃除して出て行くの」
　しかし、だからと言って市役所から何の干渉も受けないわけではない。１７日午前、七つのテントが強制立ち退きさせられ、１１歳、９歳の子供２人が連れて行かれた。
　子供の母親カロリーナ・マリアさん（４６）は、「戻ってきたら子供たちはいなくなっていた。青少年保護審議会（Conselho Tutelar）に連れて行かれていて、子供を自分のもとに戻したければ裁判所に行くように言われた。だからジョアン・メンデスの裁判所に２回行ったけど、検察官は、告訴文はまだ読まれてもいないって言うの」と訴える。
　カロリーナさんは子供が連れて行かれた日、路上生活をする場所から１００メートルのところにある、勤務先のリサイクル会社にいた。「（連れて行かれたと知って）絶望した。彼らは学校に行き、身分証明書があり、何も悪いことはしていなかったのに」と嘆く。
　「麻薬もやらず、ちゃんと子供を学校に行かせている私たちのところじゃなくて、クラコランジア（コカイン常習者が集中する地区）に行って取り締まるべきなのよ」
　審議会職員で今回の取り締まりに関わったジェナロ・フェレイラ氏は「あの辺にいる家族は既に知られた存在。でも、市や福祉団体の支援を受けない」と説明する。
　「２人の子供を保護したが、あとは逃げてしまった。親たちは金を集め、日用必需品を得るのに子供を使っている。もう何度もそういう訴えが市民から来ている。我々には取り締まりをする許可が与えられている」
　グリセリオ区を管轄するセー区役所のマウリシオ・ダンタス区長も、「彼らは信号で止まった歩行者に金を乞うために、あの場所にいる。それもたくさんの子供を伴って」と言う。ダンタス区長は市の社会福祉局に働きかけて路上生活者への接触を要請したものの、本人たちが保護を拒むのだという。（１９日付フォーリャ紙より）