ニッケイ新聞 2013年12月21日
サンパウロ市が都市不動産所有税(IPTU)の値上問題をめぐって最高裁に上告したのを受け、ジョアキン・バルボーザ最高裁長官が19日、「クリスマスまでに判断を下す」意向を明らかにした。長官は同日、フェルナンド・ハダジサンパウロ市市長(労働者党・PT)とサンパウロ州工業連盟のパウロ・スカッフィ会長(民主運動党・PMDB)の両者と面談を行なっており、ハダジ市長は面談後にFiespを名指しで批判した。20日付伯字紙が報じている。
ハダジ市長とスカッフィ氏は19日、ブラジリアの最高裁に出向き、IPTU問題についてバルボーザ長官と面談を行なった。先に入室したスカッフィ氏は10分強話しただけだが、その後入室したハダジ市長は約30分の面談となった。
スカッフィ氏は、民主社会党(PSDB)と共に、サンパウロ市が市議会で定めた14年度のIPTUの値上率上限(一般家屋20%、その他35%)は不当だと訴え、11日のサンパウロ州高等裁による法案差し止めに導いた。同氏はバルボーザ長官との面談でも「IPTU値上げは9割の市民に影響する。商業地区のIPTUの大幅な値上げは、失業を招き、サンパウロ市の経済活動にも支障を来たす」と主張した。
一方、ハダジ市長は、市議会で通過したIPTUの値上法案についてのバルボーザ長官からの質問に答え、免除や割引に関して簡単な説明した。
ハダジ市長は面談後、報道陣に対し、「サンパウロ市に損害を与えようとしている」として、Fiespを強く批判した。「Fiespはかつて金融取引暫定納付金(CPMF)廃止のために強く動いた。それで国は600億レアルを失い、国の保健部門は大きな打撃を受けた。今度はIPTUで同じことをサンパウロ市にしようとしている」と語った。
別名「銀行小切手税」とも呼ばれたCPMFは1997〜2008年に全国的に課税された税金で、2007年には365億レアル(現在の価値で530億レアル)の徴収が行なわれた。CPMFの税率0・38%のうち、0・2%が保健、0・1%が社会保障費(プロヴィデンシア)、0・08%が貧困対策費に充てられていた。
奇しくも、スカッフィ氏はバルボーザ長官との面談で、「サンパウロ市のIPTUでのやり方はCPMFを思い出させる」と語っていた。
また、サンパウロ市が市議会で通過させた値上率通りに徴収が出来ないと、市は年間8億レアルの減収となり、市議会が18日に承認した来年度予算の教育部門からは減収額の31%、保健部門からは15%、公共交通関連部門からは6・25%が各々削られることになる。
ハダジ市長の支持率はIPTU問題が表面化してから落ちている。スカッフィ氏は14年のサンパウロ州知事選立候補も表明しており、ハダジ市長がIPTU値上げに固執すると、PTがサンパウロ州知事選に出馬させる予定でいるアレッシャンドレ・パジーリャ現保健相にとってもダメージになる、との見解も示している。