ニッケイ新聞 2013年12月24日
「アリアンサは日本の政治の中で揺さぶられた歴史を持つ」——この8月に日本で『共生の大地アリアンサ ブラジルに協同の夢を求めた日本人』(同時代社)を上梓したばかりのNPO劇団「現代座」の木村快さん(77、東京在住)は、財団法人・日本力行会(東京都練馬区、)でブラジルからの留学生3人を相手に9月から10月23日までの間に計4回、同移住地の歴史講座を開いた。10月2日の第3回講座を取材した。
「これだけブラジル人が日本に来ているのに、日本にブラジル移住史を本格的に研究する人がいないのはおかしい」。社会派演劇人の木村快さんらしい言葉で、講座は始まった。
留学生向けにフリガナ付きで写真がたくさん入った「日本力行会とアリアンサ移住地」教科書(16頁)を作り、丁寧に説明した。アリアンサは協同組合形式で移住地を創ろうとした貴重な歴史的な取り組みであり、「もっと掘り起こされるべき歴史的な事実があるはず」と提言した。
力行会第2代会長・永田稠が、第一アリアンサを建設した信濃海外協会の中心人物だったことから、同講座が実現する運びとなった。
力行幼稚園で研修中の垣花(かきのはな)花恵さん(23、三世)=サンパウロ州タウバテ市=は「こんな歴史があるとは知らなかった。今はじめて日本人がどうしてブラジルに来たか知った」と驚いたように語った。
新宿日本語学校で学ぶ伊藤ラモス・ヴィニシオスさん(25、三世)=サンパウロ市=の曽祖父がアリアンサ入植者だという。「協同の歴史であることがよく分かった」とうなずいた。志村・能登屋(のとや)・清治(せいじ)ダニエル(22、三世)=サンパウロ市=は「親からは聞いてこなかった歴史だ。内幕を覗いている感じ」と感想をのべた。
当日は、力行会学校卒業生での国際交流担当副理事長の上原富美哉(とみや)さんも「みんなで『また会う日まで』を歌って見送った」との経験談を語った。総務部の田中直樹課長は「これだけアリアンサのことを説明できるのは快さんしかいない。初めての試み」と説明する。
日本力行会の事業の2本柱は、遠く海外から受け入れる留学生用宿泊施設、60年を迎えて地元と深く結びついた力行幼稚園(園児約320人)の運営だ。宿泊能力は130人分もあり、中国、韓国、タイ人を中心に常時100人近い留学生が使っているという。
なお、木村快さんが執筆した『共生の大地 アリアンサ』は同移住地関係者の間で非常な好評を呼んでおり、著者と相談の上、近日中に当地でもニッケイ新聞や日系書店(太陽堂、竹内書店、高野書店)で販売予定。日本では「現代座」(www.gendaiza.org)で販売中。