ニッケイ新聞 2013年12月25日
当地では、アジアへの穀物輸出事業を行う大手企業の一社として知られる日本の丸紅は、エネルギー事業をブラジルでの成長戦略の一つに掲げており、エイケ・バチスタ氏が率いる持株会社EBXグループ傘下の電力・ガス会社MPXエネルジア(現・エネバ)の株式取得に関心を示していると23日付エスタード紙が報じた。
エネバ社は現在エイケ氏個人、ドイツのE.ON.社の共同所有となっている。
この交渉は数カ月前から進められており、関係筋によれば、丸紅は同氏が保有する約24%の株式取得に意欲的だが、ドイツの同社は競合他社の株式取得に難色を示している。その中には、ブラジルでの事業拡大に意欲を示すフランスのGDF社も含まれる。
伊吹洋二・丸紅ブラジル社長はエスタード紙の取材に対し、エネバ社の株式取得への関心を認めた上で、まだ交渉段階であるとした。
伊吹氏によれば、ブラジルは同社にとって重要な市場ではあるものの、メイン市場はむしろチリの方だ。同社はチリで資源・インフラ分野でのプロジェクトでは安定した事業規模を誇る。チリ第3位の水道会社アグアス・ヌエヴァを買収し、上下水道事業を手がけるほか、銅鉱山の事業運営にも参画している。
同社のブラジルへの進出は1950年代に遡る。農業分野を中心に事業を展開し、2011年にはサン・フランシスコ・ド・スール港(サンタカタリーナ州)の港湾設備を運営するテルログ社を完全子会社化し、同港からの穀物輸出量を飛躍的に高めた。
同年は同社によって530万トンの大豆が輸出されたが、今年はそれが1千トン(そのうち同港単独からの輸出量は400トン)にも上るとみられており、五大穀物メジャーでもある米国のカーギル、オランダのブンゲを抜き大豆輸出ではブラジルで最大手となる。
穀物輸出の次に同社が注力するのは、石油開発設備への投資だ。三井海洋開発、三井物産、商船三井と4社共同で、ブラジル沖合プレサル層下油田開発の設備に出資することが18日に発表されている。
なお、伊吹社長によれば同社の南米への駐在員数はここ5年で2倍になっており、南米全土では72人、そのうち31人がブラジルに派遣されているという。伊吹社長は「経済規模からして、大きなチャンスはチリではなくブラジルにある」と話している。