ニッケイ新聞 2014年1月7日
現在サンパウロ市で公開中の日本映画『そして父になる』(是枝裕和監督)をブラジル人の友人らと観に行った。子どもの取り違えという出来事に遭遇した2組の家族を描いた物語だが、夫婦が子供を交換するのか否かを明確にしないままの結末だった。
一緒にいた時間か、血のつながりか―。涙を拭く姿が散見される会場を後にしながら、「彼らはどちらを選んだのか」と考え込んだ。でも友人は「最後は一つの家族になったんだね」と能天気な笑顔で、思わず拍子抜けした。もう一人も「いい映画だね」と言うばかりで、結末の如何は気にしていないよう。
「本人次第で、どっちでもいい」が監督のメッセージのような気もする。一般論で言えば、ブラジル人の多くは誰かと一緒にいることで幸せを感じる感覚が日本人より強そうなので、育ての親を選ぶような気もするが…。(詩)