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マラニョン=国連が人権問題調査要請=刑務所内の写真公開で=制御能力に欠く州政府=組織幹部ら22人を移送

ニッケイ新聞 2014年1月9日

【既報関連】マラニョン州(MA)サンルイスのペドリーニャス刑務所内で残虐な暴力行為や殺人が横行している事を重く見た国連が8日、ブラジル政府に早急な調査と即時の対応を求めたと同日付各紙サイトが報じた。

国連の要求は、7日付フォーリャ紙が12月17日にペドリーニャス刑務所で起きた暴動中に携帯電話で録画されたビデオを報じた事などが直接的な原因だ。約2分半の映像には、囚人3人が斬首され、首をトロフィーのように掲げたり、体中に火傷や刺し傷のある遺体を足蹴にしたりする様子などが映っている。

5日付グローボ局の番組では、右足の生皮を大腿部からかかとまではがされた囚人の映像なども報じたが、MA政府は7日、刑務所内での行為は野蛮との批判と共に、映像公開は、センセーショナリズムを煽るだけで、殺された囚人の遺族の心情を逆なでする非人道的な行為とも発言した。

同刑務所は8棟からなり、同州内陸部出身者が03年に作り11年1月以降拡大したマラニョン第一コマンド(PCM)と、その後にサンルイス都市圏で生まれたボンデ・ドス40(B40)の2大勢力を中心とする抗争が続いている。

13年10月以降は抗争が激化し、同月1、2日に5人、同9日は9人など、同月中に12年通年の死者12人を上回る18人が死亡。12月の暴動でも死者が出、今月2日までの死者の数は62人となっている。

同刑務所の問題は、国家法務審議会(CNJ)や米州機構人権委員会などでも取り上げられ、12月に行われたCNJの監査後は、ロゼアナ・サルネイ知事に改善計画提出などが求められた。

サルネイ知事の報告書は7日に連邦検察庁に提出され、即座に解析が始まったが、3日に行われた同刑務所への突撃隊配備は囚人の反発を招き、刑務所内から指令を受けた犯罪者が3、4日に起こしたバスや警察襲撃事件では6歳のアナ・クララちゃんが死亡、負傷者4人が入院中だ。

サルネイ知事はアナ・クララちゃん死亡の報道直後に連邦刑務所への囚人移送という法務省提案を呑み、7日には犯罪組織幹部ら22人が連邦刑務所に移された。同州では24の刑務所と警察署に5400人超の犯罪者がおり、ペドリーニャスはその内の2200人を収監している。州政府関係者は、犯罪者の移送はその後の犯罪激化を招く可能性も強く、新しく建設中の刑務所が完成したら呼び戻す意向だ。

だが、警官の数は住民710人あたり1人で、ブラジリアの135人に1人を大幅に下回り、昨年の殺人事件は2000年の460%増。100万人あたりの投獄者は全国平均の287・31人の3分の1強の82・45人のみ等、治安を巡る懸念材料は山積しており、保安局関係者も政策の誤りを認めている。

昨年末に米州機構が出した同刑務所に関する報告書やフォーリャ紙が公開したビデオに関する報道は世界中に広まり、アムネスティー・インターナショナルなどの人権団体も7日、MAの刑務所は超過密状態である事や刑務所が更正施設としての役割を失っている事等への懸念を表明した。