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刑務所で2日に1人死亡=外より危ない鉄格子の中

ニッケイ新聞 2014年1月10日

ブラジルの刑務所内では、2013年に少なくとも218人の収監者が暴行などを受けて死亡した。統計にはアラゴアス、バイア、ロライマの3州の数字が入っておらず、実際の数字は更に大きくなる可能性が強いが、現時点でも既に、2日に1人は死亡した事になる。

死者数が最も多いのは全体の27・5%に相当するマラニョン州の60人だが、この数字は、州都のサンルイスにある同州最大のペドリーニャス刑務所内での死者数そのものだ。

この統計でいう死者数は刑務所内で暴行を受けたり、〃死のゲートレード〃と呼ばれる麻薬入りのカクテルを大量に飲まされたりして過剰摂取で死んだ例だ。警察署内で収監中の犯罪者(刑務所や監獄での収監者数の10%に相当)の死亡例は含んでいない。そういう意味では、218人という数字は刑務所内での殺人被害者数といえる。

マラニョン州の場合、人口10万人当たりの殺人事件発生率は21・7だから、同州の刑務所の収監者総数4663人と死者数60人という数字から刑務所内の殺人発生率(こちらは事件数ではなく人数だが)を計算すると、収監者10万人あたり1286・7人で、刑務所の鉄格子の中は外の世界の約60倍も死ぬ率が高いという信じ難い数字が出てくる。

ブラジル全体の収監者は55万人で、米国の220万人、中国の160万人、ロシアの68万人に次ぐ世界4位だ。

刑務所内での殺人多発は、犯罪者が形成した組織同士の抗争や、収監させる前や収監後に生じた負債などがもとで起きる喧嘩などが原因とされている。

犯罪者が形成した組織で有名なのは、サンパウロ州の州都第一コマンド(PCC)やリオのコマンド・ヴェルメーリョだが、マラニョン州の刑務所内では、この両者を真似た定款を持つ内陸部出身者によるマラニョン第一コマンド(PCM)や州都とその周辺出身者がつくったボンデ・ドス40などが抗争事件を起こしている。

これらの抗争事件を防ぐには、犯罪組織毎に収監する刑務所を分けるといった配慮が必要だが、現在のように、定員数を大幅に上回る収監者がいる状態では、ストレス故の突発的な暴力事件も起こりうる。

また、武器や携帯電話が頻繁に持ち込まれるのも頭痛の種で、死者17人が出たゴイアス州では、週3回行われる監察の都度、約50丁の武器が見つかるという。12月31日に暴動を起こすとの情報を得た軍警や陸軍兵がペドリーニョス刑務所で行った監察では、携帯電話30台と200丁の武器が押収され、関係者を驚かせた。

刑務所内での死者数が2桁の州を、死者数、収監者数、収監者10万人当たりの死者、州人口10万人当たりの殺人事件発生率の順に並べると、マラニョン(60人、4663人、1286・7人、21・7)、セアラ(32人、1万9392人、165・0人、40・6)、サンパウロ(22人、21万667人、10・4人、11・5)、アマゾナス(20人、8千人、250人、28・2)、ゴイアス(17人、1万7千人、100人、21・1)、ペルナンブコ(10人、2万9704人、33・7人、34・3)で、マラニョンの数字が異常に高い事や、同州以外にも鉄格子の中で殺害される率が外よりも明らかに高い州がある事などが伺われる。北伯や北東伯は、全体的に刑務所内での死亡率が高くなっている。(9日付フォーリャ紙より)