【既報関連】国外の教育機関に5年で全世界に約10万人、うち日本にも年間1千人単位の学生を派遣し、産業技術分野の人材育成と競争力強化を目指す伯政府の奨学金プログラム「国境なき科学」(Ciencia Sem Fronteiras)が、昨年9月頃から本格的に始まった。しかし、日本の約80大学と研究機関で約1300人分ある受け入れ枠に対し、同制度により当地から日本へ行ったブラジル人学生はわずか85人…。ブラジル側の学生の希望と日本側の受け入れ態勢のミスマッチが問題となっている。
在ブラジル日本国大使館で同事業の広報を担当する髙田行紀一等書記官は、「一言で言えば双方の希望にズレがある状態」とため息をつく。
髙田書記官によれば、ブラジル人学生の多くは学部レベルでの留学を望む一方、日本側で用意されている受け入れ枠の9割以上は大学院生または博士研究員のためのもの。「約100ある学部枠への申し込みはいっぱいだが、大学院等のための1200はすかすかの状態」だという。
同事業の公式サイト(http://www.cienciasemfronteiras.gov.br/web/csf/home)をみると、現在日本の大学、研究機関で学ぶ85人のブラジル人学生のうち、大学院生・博士研究員として滞在するのは僅か28人しかいないのに対し、学部には57人。これに加え、現在選考中の、この4月に日本に派遣される学部留学生は「50人ほどになる予定で、これでもう数的にいっぱい」(髙田書記官)といい、受け入れ枠が明らかに足りていない状態だ。
髙田書記官によれば、大学院生以上の希望者が少ない理由の一つに、申し込みの時点で、入学を希望する機関を明確にさせ、指導を受けたい教授と個人的なコンタクトがとれていなければならない、という高いハードルがあるという。
学部レベルに関しては、日本国内には英語での授業を行っている機関が少なく、受け入れ先として手を挙げる機関の絶対数が少ないことがミスマッチの大きな原因だ。
今後大使館は、ブラジル人大学院生と日本の大学との接点を増やすため、日本学生支援機構(JASSO)と連携しながら、日本の大学関係者が当地での説明会を開ける留学紹介イベントの継続的な実施を図るほか、日本の各大学に学部での英語授業の開設を働きかけていくという。