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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2014年1月15日

 2年ぶりの一時帰国の旅は、ブラジル的〃洗礼〃で始まった。ルフトハンザ航空を利用したが、機体故障のため2時間待った挙句なんとキャンセルに。代わりに用意されたTAMのカウンターでは、最初こそ「目的地までのチケットをすぐ用意するから」と4、5人の職員が慌しく動き回っていたが、2時間以上経っても欧州乗り継ぎ便どころか、当地発のチケットすら発行してもらえなかった▼「パスポートだけ持ってパリ行きに乗れ」と同社係員が強要するので、「チケットを出して」と文句を言うと、「チケットなしでこれに乗ってもらうほかない」と開き直る。「じゃあ、荷物は?」と聞くと「パリ行きに乗せた。もし届かなかったら後で紛失届けを出せ」という。本来は客が怒る立場なのに、係員が先に逆ギレするので埒があかない▼パリでは案の定、何の案内もなく、自力で乗り継ぎ便を探すことに…。TAM係員は「パリから成田行きの便はない」と言っていたが、実際にはANA直行便があった。日本の会社から「我々が責任をもって荷物を探します」という頼もしい言葉を聞き、ようやく安堵できた。ANAが確認した所、実は荷物はまだサンパウロ市に置き去りにされていた▼荷物を東京のホテルまで届け、1万円の心遣いまでくれたANAの誠意ある対応には心温まった。その一方で、面倒な乗客を適当な嘘でぞんざいに〃処理〃したTAMのやり方には怒りが収まらず、2回苦情のメールを送ったが、未だに返答はない▼当地生活を始めたばかりの頃は、こうした事態は一種の「異文化接触」としてそれなりに楽しめた。しかし異文化としての新鮮味が消えた今では、秩序のないこの国の魅力とは――と自問した。移民が擬似日本社会を作った気持ちが分かる。(阿)