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クラコランジア=ハダジが市警取締りに怒る=麻薬中毒者福祉政策の矢先=「知らなかった」と州政府=背景には政治的な対立?

ニッケイ新聞 2014年1月25日

23日午後、サンパウロ市中央部のクラコランジアでサンパウロ州市警の麻薬捜査課(DENARC)による突然の取締りが行なわれ、負傷者や多くの逮捕者が出る騒ぎがあった。その場所では今週初めからサンパウロ市役所が独自に、麻薬常用者と友好的な対話を行なう福祉政策を実行し始めており、一般から好評を得ていた。そのためフェルナンド・ハダジサンパウロ市市長(労働者党・PT)は遺憾の意を示し、ジェラルド・アウキミン知事(民主社会党・PSDB)に対しても苦情を入れた。関係者はこの問題の背景にはPTとPSDBの政治的な対立があると見ている。23日付伯字紙が報じている。

23日午後3時頃、クラコランジアにDENARCが麻薬の運び屋を逮捕するために入り込んだ。麻薬常用者たちは警察車両に石を投げるなどして反抗したので、DENARCはゴム弾を使用するなどして対抗し、鎮圧を図った。これにより騒ぎが拡大し、4人が負傷し、34人が逮捕される事態となった。

これを受けてハダジサンパウロ市市長は急遽マスコミを集めて記者会見を行い、「起こる必要のなかったことだ。全くもって嘆かわしい」と不満を表明した。同市長はこの件をめぐり、市警を管轄するアウキミン州知事に苦情を入れた。しかし、この取締りは、知事はおろか、フェルナンド・グレラ・ヴィエイラサンパウロ州保安局長や軍警にも全く知らされていなかったという。

DENARC側によると「当初3人の捜査官が1人の運び屋を捜査していたところ、常用者の反抗で結局パトカー8台出動の事態までになった」と語り、「市や市警に前もって連絡を入れる必要はないと判断していた」と語っている。

市長が怒った理由は、サンパウロ市が今週から同地の麻薬常用者を対象に「ブラッソス・アベルトス」という福祉対策を20日からはじめたばかりだったからだ。同地住人をホテルに移し、1人日給15レアルでクラコランジア周辺の通りや広場の清掃を行なわせている。

州軍警は2年前の1月に同地区の麻薬常用者を一方的に立ち退かせたことで専門家筋等から強い批判を受けていた。今回同様、選挙の年の1月に、突然の行動だった。今回の市政策が好評だったことが、州市警の行動と関係があるのではと推測する筋もある。

サンパウロ市のシコ・マセナ局長は「時間をかけて築き上げていた常用者たちとの友好関係にひびが入ってしまう」と嘆いた。PT関係者によると、これまで友好的だった市長と知事の関係が悪化する可能性が強まったと解釈しているという。

州政府側は、これを政治的問題にするのを避けつつ、市警の行為を咎めない方向だが、「ブラッソス・アベルトス」に深く関わっていたPT党員の間での不信感が高まっている。市長にも「アウキミン離れ」への圧力が加わるのではないかという。PTは10月のサンパウロ州知事選にアレッシャンドレ・パジーリャ現保健相を知事の対抗馬として送り込む予定だ。