日本とブラジルの二国間で、相手国の裁判所が拘禁刑を言い渡した者について、一定の条件を満たす場合、その本国に移送する手続等について定める『日伯受刑者移送条約』について24日、岸田文雄外務大臣とコレア・ド・ラーゴ駐日ブラジル大使の署名が行われた。今後、承認を得るため国会に提出される。同日付共同通信の報道によれば、日本側はブラジルとの間で国外逃亡した犯罪人の引渡し条約締結を目指しているが、交渉は停滞している。日本としては司法手続きをめぐるブラジルとの協力を強化することで、交渉進展に向けた環境整備を図る狙いがある。
外務省の発表によれば、締結が実現した場合「裁判国、執行国及び受刑者の同意等」を一定の条件とした上で受刑者を執行国に移送できるほか、「裁判国のみが再審、特赦等を行うことができる」「移送後の刑の執行継続は、裁判国が決定した刑の性質及び期間に基づき、執行国の法令により規律される」などが規定される。日本におけるブラジル人受刑者は昨年末時点で240人、ブラジル側に日本人受刑者はいない。
日本は2003年に、欧州評議会が作成した「刑を言い渡された者の移送に関する条約」に加入し、64の締約国との間では、外国人受刑者を一定の要件の下で母国に移送することが可能となっていたが、ブラジルは締約国ではなかった。
二国間における受刑者移送条約は、2010年にタイと初めて締結。毎日新聞の24日付けの記事によれば、現在、約3000人に上る外国人受刑者の中で圧倒的な割合を占める中国(756人)とイラン(210人)との間では相互に受刑者を母国に返す仕組みがないが、同省は既に両国とも条約締結に向けた交渉を始めており、昨年2度の条約締結交渉会合を行ったイランとは実現の可能性が高まっているという。