ホーム | ブラジル国内ニュース(アーカイブ) | 死亡した母から女児誕生=トラックとの事故後の奇跡

死亡した母から女児誕生=トラックとの事故後の奇跡

ニッケイ新聞 2014年2月7日

ゴイアス州ゴイアニアで4日朝、バイクの二人乗りで走行中の夫婦が、事故に遭って死亡したが、事故のショックで女児が誕生するという事件が起きた。

死亡したのは、妊娠8カ月のアントニア・ドゥルシマル・バチスタさん(27)と夫のヴァウディミル・ロペス・オリヴェイラさん(29)だ。ヴァウディミルさん達は信号待ちで停車中、後方からきた猛スピードで走ってきたトラックが停止しきれずに、二人が乗るバイクの後に止まっていたトラックの後部に衝突。その勢いではじき出されたトラックが二人を直撃した形となった。

現場には通報を受けた軍警と救急車両SAMUが駆けつけたが、アントニアさんはほぼ即死だったため、救急隊員らは、事故の衝撃で腹部に裂傷を負ったアントニアさんの子宮から飛び出すようにして生まれた女児救出を最優先する事にした。

交通課の軍警はSAMUの救急隊員が出産を手伝ったというが、へその緒の処理などを行った隊員は、救助に協力してくれた車の運転手が太陽光を遮るためのアルミシートを女児に被せて保護してくれていたのも、体温保持などの意味で助けになったという。

2・5キロ、50センチで生まれた女児は、事故の際に額の左側と左の肩甲骨の2カ所を骨折していたが、脳の損傷はなく、産院に運ばれてからも普通の回復室に収容された。

「こんなケースは初めて」というこの道29年のベテラン医師は、「現場で亡くなった母親の腹部の傷が女児にかかる衝撃を和らげ、娘の命を助ける事に繋がった」と評価。女児が居る産院では、医師や看護婦、職員らが皆、女児の話で持ちきりだという。

父親のヴァウディミルさんも病院に運ばれたが手術中に亡くなっており、女児と共に、兄に当たる5歳の男児が親族の手に託される事になる。

事故を起こしたトラックの運転手は現場から逃走したが、その後に弁護士を伴って現場に戻り、警察に出頭。ブレーキが故障して止まる事が出来なくなったとの供述を聞いた警察は、現場検証やレーダーの記録の分析などを行い、事故の原因究明に努める。

遺族達の悲しみは尽きないが、産院に収容された女児のその後の経過は順調だという。(4、5日付G1サイトより)