連邦政府の医師派遣政策「マイス・メジコス」に登録して当地に派遣されていたキューバ人女性医師が4日、プログラムを放棄してブラジル政府に亡命を求めたと5、6日付エスタード紙などが報じた。亡命を申請したのはラモーナ・マットス・ロドリゲス医師(51)。同医師は1日、他の6人の外国人医師と共に勤務していたパラー州パカジャ市を出て、ブラジリアに向かった。
同医師はパカジャ市の友人との電話で、連警が市内で同女医を捜索していると知り、民主党(DEM)幹部に連絡を取った。同党下院副リーダーのロナウド・カイアード議員は、同プログラムによる〃奴隷労働〃の実態を訴えるために同医師を下院本会議の場に連れて行き、政府が保護を許可するまで同党事務所に同医師を留まらせ、同医師に限らず亡命を希望する他のキューバ人医師も受け入れるとした。このことで下院の会議場は騒然となり、労働者党(PT)議員は説明を求めて保健省関係者を呼ぶに至った。
首都ハバナ出身の女性医師は27年の勤務経験があり、医師団の一人としてボリビアに派遣されたこともあるという。キューバ政府と医師との間を仲介していた会社との契約書のコピーには、3年契約で毎月400ドルはブラジル内の銀行口座、残り600ドルは母国の口座に振り込まれることが記されていた。
DEMの事務所で記者会見を開いた同医師は、「他の外国人医師は1万レアルもらっていると知り気分を害した。そんなことはキューバ政府から知らされていなかった」と訴え、「家族に危害が及んでいないか心配。今祖国に帰ったら捕まると思う」との不安も明かした。「母国ではインターネットがなかったが、こちらには情報がたくさんある。初めてだまされていたと知った」。
DEM幹部は5日午後、法務省に同医師への亡命許可を求めた。他方保健省は同医師のプログラムからの除外を言い渡し、カルドーゾ法相はブラジルで医療行為を行う権利とビザも取り消されると通達したが、国家難民審議会(Conare)の判断が下るまでは、ブラジルにとどまることは保証される。ただし、同審議会の判断は数カ月後にしか出ないとみられている。
6日付伯字紙は、同医師は3日、米国にも亡命を申請し、大使館からの返答待ちと報じた。本人はブラジルへの亡命の望みも捨てておらず、当地で医師として働くことを望んでいるという。
アルトゥール・シオロ保健相は、同政策で派遣されたキューバ人5378人のうち辞退者は22人で、他国出身医師よりも辞退する割合がはるかに低いとした。ただし、同国医師が受け取る給与の金額に関しては明言せず、「米州保健機構(Opas)とキューバ政府との協定で定められている」とするにとどめた。