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ブラジルGPを仕切る〃影の女王〃=F1運営会社インタープロ=三世のイトウ社長に聞く=「コツコツ積み重ねる仕事」

ニッケイ新聞 2014年2月7日
昨年仏国パリの授賞式にて(写真=F1 GP グランプリ広報)

昨年仏国パリの授賞式にて(写真=F1 GP グランプリ広報)

モータースポーツの頂点――世界に19あるF1グランプリ(GP)開催地のなかで、最も準備が行き届き整備されているとしてFIA(国際自動車連盟)から最高の評価を受けたブラジル。その全般的な運営を担う「インタープロ(INTERPRO)」の社長は、日系三世のクラウジア・ハマダ・マシア・イトウさん(45、サンパウロ市出身)だ。開催の苦労や、良質な運営を実現するための心得を聞いた。

同社は、F1会場の車が走るコースの整備、物流管理、安全管理、要人対応、マスコミ対応、観客対応等々、全面的に運営を担う。母方の祖父は化学技術者として来伯した戦前移民の故濱田良一元三重県人会長だ。

マウア技術研究院で電気工学を学んだ後、GPブラジル開催を仕切ってきたタマス・ロホニー氏の下で92年から最初はボランティアとして働いた。経験を重ねるごとに責任ある仕事を任されるようになり、09年にタマス氏が引退したのを機に、自ら会社を立ち上げて本格的に引き継いだ。

GPでは巨額の資金が動き、観客動員数は7万人とも言われる。国外からも大勢が訪れ、サンパウロ市内のホテルが満室になる。

来社時、同伴した父と一緒に

来社時、同伴した父と一緒に

当地は安全面で課題を抱え、国際的な催しの実現において苦労が多いと思われる。「心がけていることは何か」と尋ねると、「毎年、その質を上げる努力と客席を満席にすることに力を注いでいる」という。「長年の経験の積み重ねと、その間苦楽を共にしてきた仲間の組織力によって成立している」と語り、多くの人の協力が何よりも大きいと強調した。

安全管理においては市役所、警察当局などと綿密な打ち合わせをし、他機関との良好な関係も重要だ。特に昨年サンパウロ市交通技術公社の働きはすばらしかったと振り返る。

「この仕事は、蟻のように小さな仕事をコツコツ積み重ねていくようなもの」という。年のはじめは25人で準備をはじめるが、開催直前には従業員が1万人になるそうだ。中心的な社員の大半が女性社員であるというところも興味深い。「完ぺき主義で、細かなところにまで目が行き届く女性の特性が生かされている」と笑う。

今年のGPは11月9日、サンパウロ市インテルラゴス・サーキットで開催される。世界最小のサーキットだが、改修時にセナがアドバイスしたという〃セナのS〃と親しまれる曲線が特徴だ。

エンジン規定などに大幅な変更があることに加え、日本からは今季2年ぶりの復帰を果たした小林可夢偉がケータハムのドライバーとして参戦する予定。「いろいろな点で注目されるシーズンなので大勢の人にぜひ見てほしい」と呼びかけた。