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和式伝統文化が世界の標準=環境考古学者 安田氏が講演=〃年稿〃で欧米の常識覆す=「自然に優しい生活を!」

ニッケイ新聞 2014年2月8日
安田喜憲(やすだ・よしのり)教授

安田喜憲(やすだ・よしのり)教授

「日本の伝統文化が世界の標準になる!」。ブラジル日本会議(小森広理事長)が4日、宮城県人会で開いた講演会で、東北大学大学院環境科学研究科の安田喜憲教授(67、三重)はそう力説した。湖底の堆積物が1年ごとに刻む地層のような縞模様「年稿」の研究により、地球に大変動が起こった時期に関する欧米の定説を覆した。安田教授は70人の聴衆を前に「年稿は祖先の贈り物。自然にやさしい日本的生活様式は、世界に自信を持って示せるもの」と祖国のすばらしさを訴えた。

安田教授は水月湖のボーリング(円筒状の穴をうがつこと)を行い、年稿から気候変動の記録を読み取り、「人類史を分ける世界的な気候変動は1万年前ではなく、1万5千年前だった」という画期的な発見をした。水月湖は福井県にある国指定の名勝で、05年にはラムサール条約指定湿地に登録されている。

約30年前には「大変動があったのは1万5千年前では」と考え始めたという安田教授。しかし当時は「欧州人が1万年前と言ってるのだから、安田の主張はウソだ」と誰も取り合わなかったという。「世界は欧米人の言うことが正しいと思ってきた。でも今は福井県の水月湖に過去の〃グリニッジ標準時〃がある」。年稿研究が進めば、地球物理学が苦戦している年単位での地震予知も可能になるという。

水月湖の年稿は、人間が環境を破壊すれば失われてしまう繊細なもの。安田氏は「日本のほとんどの湖ではどこをボーリングしても年稿の途絶えがない。それは日本人が山や自然を崇拝し、『命の水の循環』を守る民族だったから」と力説する。水月湖には奇跡的にも過去10万年分が保存されており、世界最長記録だという。

〃天女の里〃三保の松原を含めた富士山が世界文化遺産と昨年6月に認められた。でもユネスコは当初「45キロも離れた三保の松原は除外すべき」と断固反対だった。

安田教授は「ごねると遺産登録からはずされる心配があったが、日本人にとって二つは一体」と諦めず、関係者とともに「富士山から湧き出た水は三保の松原がある駿河湾まで流れる。山からの水が田畑を潤し、森の栄養が漁場を豊かにする。その『森―里―海』という生命を支える水の循環系を守っているのが日本人の文化」という価値観を訴え続け、選考メンバーを説得した。結局、登録が決まった時は全会一致だったという。

富士山の登録は「山を崇拝する世界観を世界が認めたということ」と同教授。日本食の世界遺産登録や年稿の保存も含め「日本的生活様式がいかに大事か、世界の人が気づき始めている」と祖国への誇りをにじませた。

USPの教授、杉尾憲一郎さん(67、二世)は「私は地質学が専門だが、考古学から見た研究は実に参考になった」と話していた。