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高まるロニー・ヴォン再評価=時代を先取りしすぎた元アイドル

ニッケイ新聞 2014年2月13日

60~70年代に数多くの名歌手を生み出してきたブラジル音楽界だが、現在、ブラジルの音楽マニアのあいだで再評価の進んでいる男性歌手がいる。それがロニー・ヴォンだ。

ロニー・ヴォンと言えば、元々は1960年代、その二枚目俳優ばりの端正な容姿で人気アイドルのひとりとして人気を博した人物だ。ロニーは、1960年代半ば、若者たちの間で一世を風靡した音楽番組「ジョーヴェン・グアルダ」にも常連として出演し、「王(レイ)」と呼ばれた大スター、ロベルト・カルロスに迫る人気もあった。

だが60年代後半、世界中で社会の変革を求めた若者たち主導の抗議運動が起き、ブラジルでも軍事政権に反対する動きが若者たちの間で激化すると、それに伴い、音楽も変化した。カエターノ・ヴェローゾやジルベルト・ジル、シコ・ブアルキなどが筆頭となり、社会的な歌詞と実験的な音楽を標榜した「ムジカ・ポプラール・ブラジレイラ(MPB)」の動きが起こった。

MPBの音楽家やファンたちは、楽天的な日常を歌ったアイドルたちの「ジョーヴェン・グアルダ」を敵視し、やがてアイドルたちは人気の基盤を失った。そんな中、ロベルト・カルロスは甘いバラードを歌う歌手として時代を乗り切り、今日まで「王」でありつづけているが、ロニーはロベルトと全く違う道を歩んだ。

ロニーはこの当時、ビートルズが実験的になっていく課程に感銘を受け、自身もそれに負けない音楽を作ることを目指したのだった。1968年の「ロニー・ヴォン」を皮切りに「永遠の王国対最期の帝国の幻想的な戦い」「マーキナ・ヴォアドーラ」の3枚のアルバムを発表。英米のロックからの影響の強い実験色強いアルバムが作られた。その実験も、むしろカエターノやジルよりもむしろ早くに行なわれていた、と今では評価されている。

だが、これらの作品は、アイドルのままでいてほしい旧来のファンからも、ロニーをアイドルと決め付けるMPBのファンからも理解されずに終わってしまう。この反応を受けロニーは歌手活動を停滞させ、テレビ司会者として今日まで知られるようになる。

だが21世紀に入ったあたりから、かつてのロニーを知らなかった若い音楽マニアのあいだで上記3枚のアルバムが再評価され、今や「60年代の隠れた名盤」として話題を呼ぶようになった。

そして2013年12月にはロニーを追ったドキュメンタリー番組が放送され、さらに今年は7月に迎える70歳の誕生日を記念して伝記も発表される見通しだ。

9日付エスタード紙のインタビューでは、周囲の人たちから理解されなかった頃の心境を称し、「あの頃は僕自身でさえも自分の音楽が何かを説明が出来なかったんだ」と語った。

また、ロニーによると、彼の息子で歌手のレオも現在、ブラジルの音楽界で自分が思うとおり音楽を表現する場所を見出せずに苦労しているという。ロニーは自分と同じ轍を踏ませぬよう反対したというが、息子は「父さんだってそれに打ち勝ってきたんじゃないか。父さんこそが僕の憧れなんだ」と言ったという。(9日付エスタード紙などより)