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「南米に居たら殺される」=ベネズエラ人操縦士が亡命申請=4カ月空港を〃住居〃に

ニッケイ新聞 2014年2月15日

ベネズエラ政府から脅迫を受けていると訴え、ブラジルに亡命を申請しているベネズエラ人パイロットがいる。4カ月の間、首都ブラジリアのジュセリーノ・クビチェック国際空港に〃住んで〃いたこの男性は、そこからブラジリアのメトロポリターナ大聖堂に居を移した。

ベネズエラ人パイロットのモイゼス・ボジェ氏は、昨年亡くなった母国のウーゴ・チャベス大統領(当時)とコロンビア革命軍(Farc、コロンビアの反政府左翼ゲリラ。中南米最大の反政府武装組織)が通じていた疑いがあるとインターネット上で告発し、政治犯として政府から追われているという。

ブラジル法務省傘下の国家難民委員会は、ボジェ氏から3年前に政治亡命の申請があり、現在も審議中だと明かした。同氏は2003年に最初に母国を出ており、ブラジルのベネズエラ領事館は同氏を母国に戻すよう圧力をかけていることも判明した。同氏は、ベネズエラ陸軍のパイロットだった。

「国には居られなかった。Farcからの逃亡者が大統領官邸にいるところの写真を公開した。そうしたら殺されそうになったので、コロンビアに逃げたがそこでは亡命できなかった。その後はペルーやメキシコにも行った」。メディアの取材にこう説明する。

2010年に一度帰国したが、妻と娘2人が殺害されていた。翌年ブラジルに渡り、ロライマ州ボアビスタの空港に滞在し、アマゾナス州マナウスでは〃友人〃の家に居た。ブラジリアに移ってきたのは、首都にいれば亡命申請が許可されやすくなるのではと考えたからだ。

「(ブラジリアは)世界で3番目に物価が高い首都だね」と笑う。車を売ったお金や、滞在した空港で「友人になった」利用客や職員からの支援で生き延びてきた。「乞食みたいなことは一切しなかった。でも、例えばこの古い携帯電話は乗客からもらったもの。職員が食べ物をくれ、家に泊めてシャワーを浴びさせてくれることもあった」という。

片時も離さないのは、ブラジルの一時滞在許可と新聞紙の切り抜き、難民保護に関する国連の本だ。「働いてお金を貯めて、スペインかスイスに住みたい。このまま南米に居たらいつ死ぬかわからない」。母国への郷愁もあるが、戻ったら死ぬとわかっている。

大聖堂に移ったはいいが、朝から何もすることがない。「ここには居にくい。どうすればいいかわからない」と途方に暮れる。空港では毎日午前2時半、「使用禁止」の表示板でトイレの一室を占領し、歯を磨き、2着しかない着替えのどちらかを洗い、シャワーを浴びるのが日課だった。その後、どこでも横になれる場所で眠った。

「時間つぶしに、利用客のスーツケースを運ぶ車を押したりした。お金は請求しなかった。いろんな人が助けようとしてくれて、話しかけてくれた。たくさん友達ができたよ」。(14日付G1サイトより)