ニッケイ新聞 2014年2月20日
バイアの非営利団体「グルッポ・ゲイ・ダ・バイア」(GGB)が14日、ブラジルで昨年、自殺または殺害された同性愛者が310人に上ると発表した。28時間につき1人の同性愛者が殺されている計算で、しかも容疑者逮捕に至ったのはわずか3件という異常な数値に身震いした▼報告書には「連邦政府や各州政府が同性愛者のコミュニティー保護を十分に保護できていなかった」と記されていたようだが、むしろ社会全体が「殺害を容認していた」ように見えるのは気のせいだろうか。どこかに「ゲイなら殺されても仕方ない」という空気が蔓延していたのではないか▼移民が築いた信頼のおかげで親日国となったブラジルは、日本人にとっては居心地のよい国だ。そのためもあってか当地には「人種差別がない」とよく言われるが、ゲイや黒人への根深い差別的社会構造は今も続いているように見える。「人種差別がない国はない」のが正解だと思う▼その一方で、毎年パウリスタ大通りでは世界最大規模、百万人以上のゲイ・パレードが華やかに開催される。パレードだけ見ている分には、まるで「同性愛者に寛容な社会」に見える。でも、そうでない現実があるからパレードにたくさんの賛同者が集まる―という裏返しの発想で見たほうが真相に近い気がする▼コラム子は兵庫北部の片田舎出身だが今も被差別部落があり、幼い頃、祖母から「あの子は〃部落〃の子やから付き合うな」などと聞かされた。部落という言葉に抱いた恐怖に似た感情は、今では風化してしまったが、近代化が未発達な社会ほど差別的感情は色濃く残るのだろう。(阿)