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逆風の中、進出支援に健闘=JETRO「プラットフォーム事業」=相談件数は横ばい500件=成長鈍化やデモ増加受け

ニッケイ新聞 2014年2月21日
昨年5月、茂木敏光経済産業大臣(中央左)が来伯して大々的に行われた「プラットフォーム事業」立ち上げ式の様子

昨年5月、茂木敏光経済産業大臣(中央左)が来伯して大々的に行われた「プラットフォーム事業」立ち上げ式の様子

昨年5月、日本の経産省が中小企業の国際展開支援を目指し、サンパウロ市で世界初となる『中小企業海外展開プラットフォーム事業』が始まった。国内でデモが吹き荒れ、外国人への労働ビザ発給件数(労働省の統計より)も11年をピークに減少に転じる中、ジェトロサンパウロ市事務所に寄せられる相談件数は過去3年間、約500~550件を維持している。様々なマイナス要因を前に足踏みしている企業も多いと見られる中、ジェトロは日本企業の誘致に健闘していると言えそうだ。今後はさらに同事業の認知度を高め、継続していく予定という。

同事業は経産省と当地の官民支援機関が一体となって「プラットフォーム」基盤形成し、日本の中小企業のブラジル進出支援を図るというもので、立ち上げ式には茂木敏光経済産業大臣も出席した。

ジェトロが法律会計事務所、コンサルタント、商工会議所、県人会、総領事館などと連携し、各種情報提供、個別相談への対応強化、ビジネスパートナーの紹介・取次ぎなど各種サービスを一元的に提供。昨年、三重県の企業が当地企業と商談会を行った際にも活用された。サンパウロ市を皮切りに中国、インド、タイなどアジア諸国7カ国でも始まっている。

同事務所の森下龍樹さんによれば、相談はブラジル内外から寄せられており、「食品、自動車部品、医療、化粧品関係など色々な分野から万遍なく相談があった」という。

なお、冒頭の相談件数は直接ジェトロもしくは関係機関に赴いた人数であり、メールや電話相談、専門家が相談者の事務所に足を運んだ場合も入れたら「数え切れない」という。同事業を利用した進出企業の件数については、「明確にはわからない」とした。

相談内容はM&Aや工場設立、現地法人設置にあたるパートナー探しなど、ビジネスに密接した具体的内容が中心だが、昨年はそれにくわえて「国内で頻発したデモや、それに伴う治安について、またブラジルの経済成長が他の新興国に比べ鈍化していることに伴い、今後の経済成長などについて聞かれることが多い印象だった」という向かい風の状態だった。

多くの企業がW杯、五輪と大イベントを控える「未来の大国」に関心を持ちつつも、当地の危険因子への不安を抱いているようだ。森下さんによれば、「中小企業はブラジルの情報がなくて不安なので、まずは進出しても大丈夫かどうかを調べている」段階だ。

またブラジル労働雇用省の統計によれば、外国人へのビザ発給軒数は、11年の6万9077をピークに減少。日本人への発給件数は1761(10年)、2260(11年)、2316(12年)と増えていたが、13年の最新データ(9月末時点)を12年の同時期のデータと比べると、1817、1791とやはり減少に転じており、同事業は逆風の中、漕ぎ出した船と言えそうだ。

しかし、関連機関同士の連携が弱く、企業が「たらい回し」になることもあった従来に比べ、ジェトロが一括して適切な相談先を照会できるようになり、企業にとってはより効率的な情報収集が可能になっているという。ただし森下さんは「プラットフォーム事業の認知度はまだ低く、もっと広報していかないといけない」と話した。