ブラジル日本商工会議所(藤井晋介会頭)は2014年度上期「業種別部会長シンポジウム」を20日午後、サンパウロ市内ホテルで「どうしたブラジル経済~W杯と総選挙のインパクト」を副題に開催し、約140人が熱心に聞き入った。昨年を「厳しい一年だった」と評価する業界が多く、W杯はビジネスに否定的な影響が強いとの声が聞かれる中、旅行業界や建設関係では「絶好調」と報告されるなど明暗を分けた。
好調な業界の代表格は運輸サービス部会の中でも旅行業界で、《ビジネス旅行客が継続的に増えており、旅行関連業界は全て好調。この傾向は継続する様子》と気を吐いた。食品部会の醤油部門では昨年数量約20%増を記録し、今年も《数量約2倍増》を目指すと鼻息が荒い。金融部会の保険市場でも《保険契約数の増加などに伴い、今後も10%ぐらいの成長見込み》と好景気振りをアピールした。
化学品部会(48社)で調査した結果、回答のあった28社のうち9社が2010年以降に進出しており、70年代の8社を凌ぐ進出ラッシュを体現しているが、W杯の経済効果に関しては《増改築に伴う建築関連製品の出荷増を想定していたが、予想外に低迷》しており、《事業へのインパクトはほとんどない》が44%を占めた。
建設不動産部会の特殊技術部門(治水・土木等)も《一昨年より3倍増。引き続き絶好調》、建設部門も《自動車産業の引き合いが多く、10%以上の受注増と非常に好調な一年》と報告した。ただし、《非日系企業の案件では計画延期や凍結が多数あり》とし、企業進出の潮目を感じさせる報告となった。
不動産部門ではサンパウロ市やリオ市の賃貸マンションの賃貸料も上がりつづけてきたが、ここへきて《リオでは月間で下降あり。サンパウロでも物件により下降あり》となっており、横ばいになりそうなムードも見られる。
自動車部会の四輪部門は、販売台数が12年の380万台をピークに昨年は376万台で、10年ぶりに前年を割り込んだ。その中で韓国ヒュンダイは昨年も前年比197%増と伸ばした。二輪部門の生産・販売では11年の205万台をピークに12年は163万台、13年は159万台と2年連続で前年割れとなった。
電気電子部会は、昨年はデジカメや携帯電話からスマートフォンに、ノートパソコンからタブレットに主力商品が移り変わる年となった。W杯に関してはデモによる輸送の混乱、試合日の休業による生産ダウンや効率低下が予想され、《ビジネスにネガティブに作用》と見ている。
低迷景気に苦しむ繊維部会では、03年から13年の間に輸入衣料が22倍に増えた。中国製衣料が激増し、最近ではベトナム製やバングラデシュ製の勢いが強まっており、《ブラジルコストによる価格競争力の低下が大きな要因。国際競争力を強化するための施策が急務》と結んだ。
機械金属部会も昨年は《W杯、五輪の2大イベントによる経済成長を期待したが、工業関連は期待はずれの低成長》、今年は《経済がV字回復する見込みはあまりなく、低成長が継続するものと推測され》るとした。
藤井会頭は冒頭の挨拶で「今までの成長モデルが限界にきている。今後は中間層の動向がカギを握る」とのべ、最後に福嶌教輝在聖総領事も「中長期的には素晴らしい成長を遂げると期待されている。昨年は大臣が3人来伯した。今年こそ安倍総理に来伯してもらい日伯関係が強化されれば」との希望をのべ、大使館の小林和昭参事官は24日の官民合同会議への協力を呼びかけた。
地デジの信頼関係拡大を=日伯ICT円卓会議4月に
商議所の部会長シンポでは、総務省情報通信国際戦略局の国際経済課の高地圭輔課長が「第1回日伯ICTラウンドテーブル(円卓会議)へ向けて」という基調講演を行った。ICTとは情報通信技術のこと。
06年にブラジルが地上波デジタル放送の日本方式採用を決めたことをきっかけに、中南米では12カ国が採用して圧倒的となり、アフリカのボツワナなど計17カ国に広まった。地デジで培ったこの協力関係を拡大させ、「日本方式を採用国に対する地デジ展開支援を進めつつ、ICTでの協力を拡大していく」方針だと言う。
4月22日に当地で開催予定している第1回円卓会議で、地デジ(超高精細TV)や光ファイバー網整備、サイバーセキュリティ等に関する日伯共同プロジェクトを事業化し、その経験をモデルとして他採用国にも活かしていく方向性が模索されている。「4月に再びお会いしましょう!」と高地さんは締めくくった。