今年の10月に大統領選挙を迎えるブラジルだが、24日、その最初の候補者が発表された。それは、現状の予想では大統領争いをするとは目されていない小政党からの候補者だが、話題の人物ではある。それが急進左派政党の社会主義自由党(PSOL)のランドルフ・ロドリゲス上院議員だ。
ランドルフ氏は現在41歳で議員としての当選回数もまだ1回と、政治家としてはまだ駆け出しの存在だ。また、所属のPSOLも連邦議員数が下院で3人、上院でランドルフ氏のみという少数政党に過ぎない。また、同氏の選出州もブラジルで最も規模の小さな州のひとつの北部のアマパー州だ。
だが、2011年に上院議員をつとめて以来、同氏は議会内で歯に衣を着せない発言と行動力で注目を浴びている。最初にマスコミの目に止まったのは2012年に起こった、賭博家カルリーニョス・カショエイラ氏に絡む大型汚職事件の特別対策委員会だったが、童顔の眼鏡面で激しい追及を行なうランドルフ氏は「議員にハリー・ポッターのような人がいる」と評された。
それから同氏は、急進左派らしい行動でも話題を呼ぶ。12年には軍事政権時代(1964~85年)の陸軍秘密警察の跡地訪問を敢行しようとして、右派の下院議員に暴力行為を受けたことで話題となり、さらに最近では、軍事政権によって大統領罷免を断行されたジョアン・グラール元大統領(1919~76年)の名誉回復を働きかけ、実現もさせた。
こうした言動で、小政党所属ながらも話題を呼んだランドルフ氏は、PSOLの党内選挙でルシアナ・ジェンロ氏を破って党の大統領候補に選出された。結局、副大統領候補をつとめるのはルシアナ氏で、同氏も42歳という若さだ。
ランドルフ氏は、現状で言えば、再選を目指す現大統領のジウマ氏(労働者党・PT)や、PTのライバル政党・民主社会党(PSDB)のアエシオ・ネーヴェス氏、今回の選挙で第3勢力を狙っているブラジル社会党(PSB)のエドゥアルド・カンポス氏とは実績でも知名度でも大きく水を開けられてはいる。
だがランドルフ氏は、「まずは政権での権力を握るために民主運動党(PMDB)を与党につけることをやめさせないと」と、ブラジル古参の大型政党で、大統領を輩出しないまま、その都度の政権政党につき、癒着体質の強い同党の存在を批判している。さらに「ジウマにせよ、アエシオにせよ、カンポスにせよ、自分にとっては連立政党政治のえじきにしか見えない」と語っている。
またランドルフ氏は「もっと国民が積極的に政治参加できる情況を作りたい」として、自身が大統領になったあかつきの憲法案まですでに用意してあるという。
一方でPSOLは、2月にリオでジャーナリストを爆薬で事故死させてしまった抗議運動で、デモの当事者に資金援助している容疑をもたれたが「我が党は抗議活動を常に支援するが、アナーキズムを唱える集団は政治権力や民主主義のために戦う私たちとは真逆のことをやる存在だ」と強く否定している。
現状で言えば、大統領への道のりはまだ遠いといわざるを得ないが、「政界のハリー・ポッター」がどんな魔法を見せるか、見ものである。(24日付フォーリャ紙などより)