オレンジとオレンジジュースの生産量世界一を誇るブラジルで、病気に強い遺伝子組換え種の試験栽培が始まる。
この試験栽培は、柑橘類保護基金(Fundecitrus)の依頼を受けた科学者達が、オレンジの生物学的研究で世界的に知られる第一人者でスペイン人のレアンドロ・ペニョン氏の指導の下で始めたものだ。
サンパウロ州イバテーの農場で試験的に植えられた苗は650本。スペインから輸入したオレンジの遺伝子組換え種は、病原菌などの繁殖が起きていない事を確認後、国家バイオ保全技術委員会(CTNBio)の認可を受けたもので、2年半後には、ブラジル国内初の遺伝子組換えオレンジが収穫される見込みだ。
ブラジルでの遺伝子組換えオレンジの試験栽培は2010年に続くものだが、前回の試験栽培の時は、開花・結実まで栽培する事が禁じられていた。今回は、2013年5月にCTNBioが結実までの栽培を認可しているため、初めての遺伝子組換えオレンジが収穫される事になる。
試験栽培中のオレンジは、葉や実に黒い斑点が現れるピンタ・プレットや、暑くて湿気の多い地域に多い潰瘍病(カンクロ・シトリコ)に対する抵抗力が強いと見られている。これらの病気はバクテリアによって発生し、年間65億ドルのオレンジを生産・加工しているブラジルの生産農家にとっては頭痛の種だ。
柑橘類保護基金では別の種類のオレンジの試験栽培も年内に始める予定で、最初はサンパウロ州南部で気候による影響を確認するといい、潰瘍病への抵抗力のほどを試すための試験はパラナ州北部で行われる。サンパウロ州では、病気に対する研究のための試験栽培は禁止されている。
最初の収穫は2年半後だが、遺伝子を組み換えた事による影響(病害虫への抵抗力や生産性)を最終的に判断するには7年程度かかるため、遺伝子組換え種のオレンジが市場に登場するのは2020年代となる。
柑橘類保護基金では、世界中のオレンジ栽培農家を悩ますカンキツグリーニング病に関する研究も並行して行う計画を立てているが、いずれの病気も、病原菌や害虫が遺伝子組換え種に対する抵抗力を得る可能性もあり、従来通り、農家による細やかな配慮や世話が不要となる事はないと警告している。(26日付エスタード紙より)