サンパウロ州パラナパネマ市の中川アントニオ市長は「私は選挙で選ばれていないし、政治家の経歴もゼロだった」と語って聴衆を驚かせ、「副市長としてシャッパに入った。だが当選した市長が、天文学的な借金を市が抱えているのと、市長の給与の安さに驚き、辞任してしまった。それで私がやらざるを得なくなった。可能な限り出費を削減し立て直した」という、前任者の後始末から始まった苦汁の出発を語った。
またポンペイア市のヤスダ・オスカル市長も「選挙の当初、世論調査で僕に投票すると答えたのは2%しかいなかった。でも約7千軒の家のドアを全て叩き、僕の考えを説明した。JACTOの存在感は大きく、19年間、西村農学校で教諭をした経歴、日系人の顔がその状況を覆させた」と振りかえった。
三世で47歳の若さで2期目を務める樋口市長は「事件や問題は〃連邦〃では起きない。常に市が現場だ。どんな問題もまず市役所に持ち込まれ、ここから州や連邦に上げられる」と市政の難しさを滔々と説いた。
メンサロン事件など汚職が蔓延する政界の現状を青年から指摘され、樋口市長は「ブラジル社会は現在、誰を信じていいか分からないぐらい暗いトンネルの中にある。その先にようやく信じられそうな政治家がでてきた。それが日系人に期待されている役割だ。真面目さ、誠実さを発揮することで市民からの期待に応え、この国を良くすることができる」と想いを込めて訴えた。
加えて榎本市長は「汚職は政界だけでなく、全ての社会階級に蔓延している。現実を知り、我々はもっとインテリジェンチになる必要がある」とし、ただ真面目なだけでなく、不正や汚職と立向うための知恵を編み出す必要を訴えた。さらに「僕らのそんな経験を伝え、青年の政治への関心を高めるこのような機会は素晴らしい。これからもできる限り参加したい」と述べ、総領事館の先導を称賛した。
中川市長は日系子孫の立場から「ブラジルは我々の親を受け入れてくれた素晴らしい国。それを少し良くするために我々は役立たなくてはならない」と青年に語りかけた。
安部順二連邦下議や羽藤ジョージ州議に加え、西本エリオ州議もマイクを握り、「我々が親から受け継いだ誠実や真面目さを、もっと社会に普及することが最も必要とされている。ここに並ぶ日系市長は、周りに良い刺激を与える模範だ。私が初めて会う青年リーダーがここにたくさんいる。革命的に新しい関係を促す交流会だ」と高く評価した。
青年文協の西村リカルドさんは「ただ話してお終いではいけない。行動が大事。これを起点にして、全ての日系団体が力を合わさるような取り組みをするべき」と呼びかけた。予定時間を大幅に超過して3時間も交流した。(終わり、深沢正雪記者)