「色々なタイプの選手が混ざるチームは強い。海外のビッグクラブでプレーする選手が増えた日本代表は、今まさに成熟の真っ最中」。流暢な日本語を駆使して日本代表チームについて語ったのは、Jリーグ・FC東京で、その前身にあたる東京ガス時代からチームの躍進に貢献し、多くのサポーターから敬愛された〃キング・オブ・トーキョー〃ことアマラオ(47)だ。
1992年の初来日以来、FC東京を含む4チームで活躍した。15年以上に渡って日本のリーグでプレーし、引退後も社会人リーグなどで監督を務めるなど、日本サッカーへの造詣は深い。「自分が来た当初は、いくら上手でもあんまり若い選手は試合に出られなかったり、クラブのフロントが親会社からの出向役員ばかりだったり、悪い意味で〃日本的〃な習慣をたくさん引きずっていた。一番変わったのはその部分だと思う」との言葉も、日本のサッカーに長い間携わり続けてきたからこそ出来る分析だ。
「小学生に交じって公文式で覚えた」という日本語は非常に堪能で、ひらがな、カタカナの読み書きまでこなす。
2011年末に帰国し、昨年9月には郷里のサンパウロ州オルトランジャで水周り製品の販売会社を設立、実業家としての顔も持つ。だが「会社はあくまでオーナーの立場で、自分の本当の仕事はサッカーだと思っている」。帰国直後から、サンパウロ州の下部リーグに所属するチームのアドバイザーを務めるなど、日々コーチ業の勉強に精を出す。
11年3月の東日本大震災の影響を心配する家族の声を受けて帰国したものの、「家族の生活を良くできたのも、多くのことを勉強して人として成長できたのも、日本に長く居られたから。そのサッカー界に恩返しするためにも、出来るだけ早く日本に戻って、監督として自分の経験を伝えたい」。サンパウロ市近郊の閑静な住宅街に邸宅を持つ成功者となった現在も、日本への思いは強い。
日本の事務所に10年間に渡って所属し、東京でモデルとして活躍した妻カチアさんとの間に儲けた長女の名前にも、日本への敬意を込めた。「今年の1月末に生まれたばかりで〃ナオミ〃っていうんだ。奥さんと二人で話して、日本風の名前をつけようってね」。今年5月に予定する訪日の際に印鑑をつくるため、名前の音に当てる漢字も検討中だ。
W杯における日本代表のキーマンには、チーム最年長のMF遠藤保仁を挙げた。「ブラジルのような広く、環境も地域によって全く違う国で、しかも1カ月という短期間の大会を戦う際には、経験あるベテラン選手の状態がチームの出来を大きく左右する。彼が落ち着いて大会に臨めれば、きっと日本は大丈夫」と話し、「自分を信じて、チームのことを信じて、一つになれば絶対負けない。(過去最高成績を上回る)ベスト8だって大丈夫!」と日本チームにエールを送った。(つづく、酒井大二郎記者)