「希望する国での滞在プランを自ら考え、3カ月間海外で生活して日本で得られない体験をするという、会社の新しい研修制度に応募し、冗談半分に〃リオのカーニバルに出場する〃と計画を立てたら採用されてしまった」。そう笑いながら語るのは、日本経済新聞社(本社=東京都)の営業職、黒川隆雄さん(兵庫、30)。
音楽が好きで、ジャズピアノやドラム、パーカッションなどを趣味でやっていた。ブラジル音楽ではボサノヴァからサンバまで好きで、よく聴き、演奏することに興味もあった。しかし、「世界的に有名なブラジルのカーニバルで、一度も外国に行ったことのない自分がまさか出場できるとは思いもしなかった」とも。
昨年中旬に研修に行けることが分かり、すぐブラジルに関わりのある企業の知人をたどって、当地の関係者を紹介してもらった。学び始めたばかりのポ語を駆使して、出場できるエスコーラを自力で探した。何校かを見学した結果、打楽器の小太鼓(カイシャ)で出られることになったのは、サンパウロ市北部が本拠地のスペシャルグループの名門「X9パウリスターナ」だ。
ブラジル入りできたのが12月の中旬でエンサイオ(練習)が最終調整段階だったため、最初は断られたが「練習には参加させてもらって、やっているうちにメストレ(指揮者)に『やってみたら?』と認めてもらえました」と肩をなでおろす。黒川さんは「練習で言われていることの半分以上はわからないが、楽しくやっています」と充実感を感じている。
「ブラジルの人はみんなが明るい」と渡伯前に聞いていたイメージ通りで、「様々な人種がいて、エスコーラには年代も様々な人がいて、突然日本から飛び込んできた自分のことも受け入れてくれたと感じるのが嬉しい」と語る。
28日深夜に迎えた本番は、大雨に見舞われ、「まさかの白塗りに、かつまさかの大雨で、衣装は重くなりすごく大変でしたが、あっという間の60分でした。とても楽しかったです」と振り返る。サンパウロ市でパレードに参加した翌日にはサルバドールに飛び、余すところなくブラジルカーニバルを体験する。