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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2014年3月7日

 サンパウロ市カーニバル最後のパレードは「サンジョルジ」がテーマで、締めくくりにふさわしい清々しさに溢れていた。サンパウロ市で3年連続優勝を飾ったモジダーデ・アレグレのテーマも「信仰」で、サンジョルジから連想された様々なイメージが衣装や山車に展開されていた▼白馬に跨った騎士が槍で竜を刺しているその絵はどこかで見たことがあるだろう。現トルコのカッパドキアで生まれ、竜を退治した勇敢な伝説が有名なことから戦いの聖人とされる。コリンチャンス蹴球場にもその名が付き、最も人気のあるサンバチームの一つ「ヴァイヴァイ」の守護聖人もそう▼単なる「キリスト教聖人」としか思っていなかったが、調べてみると古代ローマ末期の十字軍殉教者で、欧州中東史に深く根差した人物だと分かった。日本では古代ギリシア語の「ゲオルギオス」と呼ばれてずいぶんと縁遠い感じだが、英語なら「ジョージ」、イタリア語では「ジョルジョ」、スペイン語は「ホルヘ」などの耳覚えのある名前で呼ばれる▼イングランドの守護聖人だったことから、1147年に英国十字軍がポルトガル王を支援した時にその信仰がリスボンに持ち込まれ、後にブラジルにも伝えられた。思えば英国ヘビメタバンド「アイアン・メイデン」も「フラッシュ・オブ・ザ・ブレード(剣の輝き)」でサンジョルジを歌った。スペインのカタルーニャ地方やロシアのモスクワ市の守護聖人でもある▼北東伯サルヴァドールのアフリカ系信仰ウンバンダではオグン神の生まれ変わり「オショシ」となった。ジョルジの名を持つ日系人も多い。当地文化の根っこは欧州や中東にあるとつくづく感じる。(深)