チリ海岸部のヴァルパライソ(サンチアゴから約120キロ、同国の国会所在地)で11日、ミチェレ・バチェレ大統領の就任式が行われた。ブラジルのジウマ大統領は10日夜チリに到着し、11日朝、就任前のバチェレ氏と首脳会談を行ったと11日付アジェンシア・ブラジルなどが報じた。
バチェレ大統領は2006~10年にも大統領職を務め、同国史上最も高い支持率を得たまま、ピニェラ氏にバトンを託した。今回はピニェラ氏からのバトンを受けた再就任で、同国の民生復帰(1990)以来初の両院で与党が大勢を占めるという状況下での政権発足となる。
だが、与党が大勢を占めるという言葉とは裏腹に、新政権は不安定な要素を抱えた出発となる。これは、新政権発足前に与党に加わった左派の共産党とそれ以前から連立を組んでいる中道派のキリスト教民主党まで、9党による連立政権の幅が広く、政権内で意見が割れた場合、キリスト教民主党脱退という、第一期政権で起きた事態が繰り返される可能性もあるからだ。また、与党勢力には政党に属さない議員も数多く含まれている。
また、国政上は、経済の減速化とインフレというブラジル同様の問題や、選挙で公約した教育制度や税制、憲法の改革、公共サービス改善といった問題に直面する事になる。
一方、ブラジルが期待しているのはバチェレ氏復帰で南米南部共同市場(メルコスル)内の関係が強化される事だ。ピニェラ政権では域内諸国とも経済的な面でのみ協力という姿勢が目立ち、ブラジルとの関係も冷え込んだが、ジウマ大統領は、バチェレ氏となら、南米諸国も緊密な関係を取り戻せると期待している。
外交面で今、注目されるのは、12日にサンチアゴで開催される南米諸国連合(ウナスル)外相会議で議題となるベネズエラ問題だ。12日の会議が首脳会談ではなくなり、肩の荷が少し軽減した新大統領だが、ベ国への対応は、人権問題を追求するキリスト教民主党とチャベス派支援を訴える共産党との温度差が大きく、調整も困難だ。
バチェレ氏との会談前に記者団の質問を受けたジウマ大統領は、「ベ国問題はウナスルで特別委員会を作って対応し、(チャベス派と反対派の間の)合意、協調、安定を目指す」と発言。チリとの関係については、社会格差の縮小は域内全大統領の課題とした上で、「両国の交易関係は、ブラジル企業からチリへの直接投資と共に、チリ側からブラジルへの投資も含む地域的な統合の枠中で進むべき」と説明。「このような関係は発展と社会統合、民主主義的な環境を作り出す事に寄与する」との考えを示した。