〃ブラジル移民の祖〃水野龍の孫、ジョナタン正一(せいいち)さん(17、三世)が3日、日本のプロ野球独立リーグ「四国アイランドリーグplus」に属する『高知ファイティングドッグス』(高知FD)に練習生(ピッチャー)として入団した。契約期間は今季のみ。5日からチームに合流しており、本選手への昇格を目指す。祖父の故郷である高知県佐川町から、日本プロ野球界への挑戦が始まった。
きっかけは昨年8月、ブラジル高知県人会創立60周年式典でのこと。出席したジョナタンさんが慶祝団の同県議員らに、「日本で野球をする機会があれば」と明かしたことに対し、県政らの協力もあって、今回ついに練習生として入団するに至った。
言葉の壁もある中、選手寮での生活となるが、水野龍顕彰団体の「佐川町水野ブラジル協会」が、支援としてバザーや募金活動を行っており、今月末には水野龍が東京・銀座で創業した「カフェー・パウリスタ」をテーマに、同町で展示会を開く予定。
佐川町立図書館に勤務する移民史研究者の中村茂生さん(49)は、「支援や報道が本人のプレッシャーになってはいけないという心配もあるが、素直な好青年のため皆に好かれている。厳しい練習にもついていっているよう」と期待を寄せる。
パラナ州都クリチーバ在住の父龍三郎さん(83、二世)は、「日米どちらかでプレーしたいという夢が実現した」と息子の成長に喜びの声。「家族だけでは日本へ送ることが出来なかった。関係者みなさんのおかげです」と感謝し、「日本では毎日野球詰めの生活でもっと上手くなるだろう。ぜひプロになって欲しい」と話した。
ジョナタンさんが野球を始めたのは12歳の頃。クリチーバの球場へ試合観戦に行った際、その魅力に惹かれた。「遅くから野球を始めたから周りの期待はそれほど高くなかった」と父は話すが、その当時を知る指導者が、5年後に彼の力投を見てその成長ぶりに驚いたという。大会で最優秀選手に選ばれるなど高い評判もあったよう。
地元クリチーバでのチーム練習は週1回、それも2時間だけ。個人練習として「弟を相手に毎日練習していた」と父は振り返る。高知FDでは午前9時から午後5時まで、みっちり鍛える毎日を送る。ジョナタンさんは「日本のレベルが高く苦労している」と父に明かしたという。
本人は「契約してもらえるよう全力で練習し、将来的にはセ・パ12球団でプレーしたいです」と、本紙に意気込みを寄せた。球団側も「日本の野球に慣れ、ブラジルで鍛えた能力を発揮して欲しい」と期待をかける。前人未到のブラジル移民の道筋を開いた水野龍の孫だけに、ぜひプロ野球への道も〃開拓〃してほしい。