ニッケイ新聞 2014年3月25日
サンパウロ州の公立学校教師の組合が24日、州立校の生徒の46%は授業内容を消化しないままで進級しているというアンケート結果を発表した▼日本ならすかさず〃落ちこぼれ〃はどれ位いるのかと訊かれそうな話だが、ブラジルでは私立校と公立校のレベルに歴然とした違いがある事や、最近は以前ほど留年させなくなったという話を思い出した。数年前には、8年生の子の母親が「うちの子は何も知らないから留年させてくれ」と頼みに行ったという報道もあった位だ▼教育はその国の将来を決める大切な分野なのに、ブラジルの教師の給与は低く、企業に就職すれば高給を約束される数学や物理などの教師は慢性的に不足している。今年は更に、新しく配られた教科書の内容が前の学年のものと完全重複というとんでもないミスも起きた▼アンケート結果を見た途端、「宿題やテストはあっても生徒がどれだけ習得したかきちんと評価されず、その後の授業の改善に繋がっていない」「一方通行的な授業が繰り返されている」等の現状が頭に浮かんでしまうのはコラム子だけではあるまい▼日本なら全日制の中学や高校で学び、家でも2時間位予習復習するのが当たり前だが、ブラジルでは半日授業が大半で家庭学習は宿題だけという生徒も多い事だろう。こつこつ学ぶ事をせず、真の学力、応用力のない生徒が大半ならば、専門知識や技術を持つ熟練工が常に不足している現状も頷ける▼公立校生徒の46%が授業不消化という実態は学校や教師だけの問題ではない。その背後には、生きていくのに精一杯で子供の勉強まで見てやれず、習っている内容について行けない親やそれを容認する社会もあり、根は深い。(み)