インターネットに関する個人の権利などをまとめた「マルコ・シヴィル・インターネット法案」が25日夜、下院の投票を通過し、上院に回された。同法案は、民主運動党(PMDB)のエドゥアルド・クーニャ下院リーダーを筆頭とした、連立与党内の反連邦政府勢力「ブロコン」による反対が懸念されていたが、否決は回避された。26日付伯字紙が報じている。
25日夜行なわれた同法案の下院での投票は、具体的な票数は発表されなかった。だが、これは圧倒的多数を意味する際に行なわれる公表の仕方であり、反対票を投じたのは社会大衆党(PPS)のみだった。
これで同法案は上院の投票に回されるが、この法案を是が非でも通したかったジウマ大統領としては、懸念されていた下院のブロコン勢力の反対が回避されたことでひと安心の結果となった。それは4月22日、23日にサンパウロ市で今後のインターネット・ガバナンスに関する国際会議が開催されることになっており、ジウマ大統領は、そのときまでに同法案を間に合わせたい(裁可したい)と願っていたからだ。
この法案を通過させるにあたり、連邦政府側は改正をひとつ行なった。それは、ブラジルのネット利用者のデータを集積して国有化した「データセンター」の創設を断念したことだ。米国の国家安全保障局(NSA)によるブラジルへのスパイ活動が報じられたのに対応すべく、ジウマ大統領はデータセンターの設置を求めていた。だが、そうするとネットのアクセスに支障が出ることを恐れると主張する意見があったことや、フェイスブックやグーグルといったネットの大手企業が「そうしたデータベースを作ると、維持などに莫大な費用がかかる」と強く反対していた。
だが、ブロコン側がもっとも反対していたネットの「中立化」には変更が加えられなかった。中立化を行なうと、ネットの接続を速めるサービスを行なったり、課金制のサイトを作ったりすることが出来なくなるが、クーニャ下議をはじめとするPMDBの議員たちは、同党がそうした通信業者と強い結びつきがあることから強く反対していた。
PMDBの上層部や連邦政府からのかねてからの強い説得もあり、クーニャ下院リーダーは折れる形となった。だが、「個人的には今も中立化はあるべきではないと思っているし、もしそれが大半の意見であるならば我が党はこの問題について追及しつづける」と語っている。
連邦政府の人事改編で大臣職が思いのほか得られないことや、知事選での処遇に不満を抱いたことで反旗を翻し、「労働者党(PT)との連立を再考したい」とも叫んでいたPMDBの反乱分子を主体としたブロコンだったが、この法案通過により沈静化へと向かいそうだ。