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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2014年4月1日

ベネズエラの著名人達が政府の言論統制などに抗議するために撮った写真を3月28日に見て、思わず息を呑んだ。ネットに上がった写真はほんの一部だが、09年のミスベネズエラで同年のミスユニバースになったステファニア・フェルナンデスさんは、冠を被り、両眼から血の涙を流し、血塗られた麻縄で猿ぐつわをかまされた姿で写真に納まった▼ステファニアさんは祈るが如く両手を組み、その手にも血が流れるという構成だったが、現在投獄中のレオポルド・ロペスさんの写真は怒りに燃えた眼差しで猿ぐつわをかみしめ、大きな刃物で首に巻きついた麻縄を断ち切ろうとしている。ネットに上がった写真は皆、顔も体も血のりや煤で汚し、麻縄を体や首に巻きつけて、政府への反論など、自由な言論を封じ込めようとするマドゥーロ政権への強い抗議を表している▼2月に始まった政府デモなどでの死者は36人に上り、ベ国では報道関係者への圧力や暴行が頻発しているとの報などを読むにつけ、これでは軍政下の頃とどれだけ違うのかと考え込んでしまう▼一方、ブラジルは3月31日に軍政開始50周年を迎えたが、民主主義が望ましいという人が62%いる一方、現状に満足しているは9%、やや満足が59%で、満足していないが28%という数字もある▼民政復帰から30年近くたっても、汚職や政治家には懲罰が及び難い事など、何かにつけ民主主義が成熟していないと感じる事もなくはないブラジル。原因は色々だろうが、勝ち取ってきた民主主義という意識を余り感じないのも気がかりだ。昨年からのブラジルや現在のベ国の抗議行動が民主主義の成熟と安定に繋がる事を願いたい。(み)