ニッケイ新聞 2014年4月2日
横浜市で開催された国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の総会が終わり、3月31日に地球温暖化で社会が受ける影響と対応策についての報告書が公表された。この最新報告書には、カフェ栽培への影響など、ブラジルにも関連した項目も出て来る。
3月25~29日の予定だったIPCC総会は30日まで延長され、第5次評価報告書の公表は31日に持ち越された。ブラジルでは現在、少雨と洪水という、相反する問題に直面しているが、研究者達はこれらの問題も地球温暖化と密接に関連していると考えている事などが3月29日~4月1日付エスタード紙などに掲載された。
産業革命以降の技術の発展は目覚しく、人類の生活は豊かになった。だがその一方、人口増加や生産活動の拡大などに伴う二酸化炭素などの温室効果ガスの排出急増で、大気や海水の温度は徐々に上昇。IPCCでは今回、今世紀末の気温は最悪4・8度上昇するというシナリオに基づく報告書を作成、発表した。
地球温暖化の影響は、極地の氷が解ける、ヒマラヤなどの万年雪減少、海水面の上昇で小さな島が沈む危険といった形で認識されてきた。
ところがその後、世界各地で干ばつや洪水、超大型の台風といった気候変化が頻繁に現れるようになり、海洋も含む動植物の生態系の変化や、海岸侵食の例も注目されるようになった。
ブラジルでは、2005年と2010年にアマゾンで大干ばつが起き、北東伯でも数年来、干ばつ被害が続いている。今年はサンパウロ州カンタレイラ水系が6月21日に底をつくと予想される他、中西伯中心に水力発電所のダム水位が軒並み低下し、停電への懸念も拡大中だ。
一方、19メートル半に及ぶマデイラ川増水などに伴う北伯の水害は現在も拡大中で、「観測史上初」の単語が各地で飛び交っている。
少雨や大水は農業にも影響し、南東伯では大豆やトウモロコシなどの穀物、カフェや果物、野菜の減産は避けられない。
いみじくも、IPCCは、温暖化は小規模農家にも多大な影響を及ぼす事や、気温上昇と雨減少でサンパウロ州やミナス州でのカフェ栽培地は縮小するとの予想を公表。温暖化の影響を受け易いとされる米や小麦、大豆、トウモロコシ、カフェといった農産物はブラジルの主要産品だし、穀物生産の減少は世界の食糧安全保障にも関わる問題だ。
また、熱帯雨林からツンドラまでの全地域で樹木の死期が早まっているのも気がかりだ。気温上昇による植生変化は従来からいわれていたが、樹木の死は周りの動植物の生態にも大きな影響を与える上、幹や葉、根などに蓄えている二酸化炭素の放出も招く。05年の干ばつで起きたアマゾンの植生喪失では、50億トンの二酸化炭素が放出されたといわれている。
温暖化や薬多用などが原因の蜂や蝶、その他の虫の減少は受粉作業の担い手喪失を意味する。サンパウロ総合大学(USP)のヴェラ・ルシア・フォンセッカ氏は、2007年の蜂蜜の売上げ15億ドルに対し、同年の蜂の受粉効果は2120億ドルと試算している。
なお、「エタノールやバイオディーゼル生産用の植物の栽培増加は生態系にリスクをもたらす」との一文は、ブラジルなどの反対で報告書から省かれた。