ニッケイ新聞 2014年4月4日
京都佛立ミュージアム(博物館)で6月7日から、W杯記念展示『ブラジルと仏教展~一番遠くて近い国』が開催される予定だ。「日系人の仏教が、今ではブラジル人の仏教になっている。サッカーに沸き立つ日本にも、この素晴らしさを伝えたい」―2日に来伯した同館の館長、長松清潤さん(45、京都、せいじゅん)は、そう企画にこめた思いを吐露した。10日まで滞在し、サッカー博物館、リンスやプロミッソン市、タピライの佛立聖地など、サッカーや移民と縁の深い場所を巡り取材を行っている。「色々な力添えを頂きつつ、良い展示会にしたい」と意気込んだ。
「世界最大の日系社会があるのに、殆どの日本人はそのことを知らない。W杯とサッカーを入り口として、移民やブラジルの仏教のことを知らせたい」と長松さんは熱意を込めて語る。
同展示はサッカーをはじめとし、コーヒー、日系移民の歴史、そしてブラジルと仏教を扱う。過酷な新天地開拓に信仰の力は欠かせないとして、僧侶の乗船を同宗に依頼した〃移民の祖〃水野龍との関連や、笠戸丸移民として渡伯し、当地の開祖となった茨木日水上人の一代記、遺品や銅像、肖像画なども展示する。
人の心を癒す「生きた仏教」「躍動の仏教」を展示する目的で、同館は2年前に創設され、「宮沢賢治と法華経展」「東日本大震災復興支援 ハチドリのひとしずく展」等を開催してきた。
長松さんは京都の長松寺および、横浜の妙深寺で住職をつとめる。長松家の5代前の長松清風は本門仏立宗の開祖(長松日扇聖人)で、幕末時に退廃、混乱した仏教を改革しようと立ち上がり、「幕末・維新の仏教改革者」と呼ばれた人物という。
長松さんには、長松清風と坂本龍馬との知られざる関係を、海援隊の公式出版物ながら全く知られていない『閑愁録』を通して描いた著作『仏教徒 坂本龍馬』(講談社、12年)もある。
当地伝来後、同宗は経典のポ語訳をいち早く実現して一般社会に布教、今ではコレイア教伯さんが初の非日系教区長を担う。長松さんはそうした現状を「人種の殻を抜けたという意味で、日本の仏教よりも仏教らしい」と賞賛、「若いブラジル人の僧侶が頑張っている姿、活気ある仏教の様子を、ぜひ日本の人に伝えたい」と語った。
なおサンパウロ市の日教寺(Rua Ibaragui Nissui, 166, Vila Mariana)で5、6日の両日、長松住職による「法話」が開かれる。初日は午後7時、2日目は午前9時から。字幕通訳つき。今回特別に、開祖長松清風氏の数珠、袈裟、一代記および、イラスト中心の指南書「俗画さとし絵」の海外初公開も行われる。
展示会の開催期間は6月7日~9月30日(月曜休館)。場所は京都佛立ミュージアム(京都市上京区御前通一条上ル東竪町110)で、入場無料。