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ダンボールで造る街展示=フランスの芸術家の作品=9日からサンパウロ市ポンペイアで

ニッケイ新聞 2014年4月9日

 サンパウロ市のSESCポンペイアで4月9日から、彫刻家、写真家、画家、映画監督、現代アーティストとして世界的に知られるフランス人のクリスチャン・ボルタンスキー氏の展示会「1992万4458+/-」が開催される。
今回の展示はダンボール製のマケッチ(箱庭)で、1400平方メートルの会場には、ビルに見立てたダンボール(膝丈以下の低いものから天井まで届く高いものまで)が950も並ぶ。各々のダンボールには電話帳のページが貼られ、「一人一人を大切にする」という思想を表している。
950のダンボールの塔は25の群れに分けられ、各コーナーでは、国外で生まれた人に限定して、ブラジルに来た経緯やサンパウロについて思う事などを訊いた各人の歴史的証言を個々の人の肉声で聞く事が出来るようになっている。
「サンパウロには私が想像する事も出来ない経験を持つ人が本当に無数に居る」というボルタンスキー氏は、「サンパウロの正確な人口は知らないが、どんなに人口が多くても各人が持つ経験や経歴は1+1+1+…という事実は変わらない」という。
ボルタンスキー氏は1944年にユダヤ人の家庭に生まれた。生まれた頃の家族はナチスの迫害を逃れた人々と交流を持ち、家の地下に造った部屋に隠れて暮らしていたという。
パリ郊外にあるアトリエで行った展示会には、ユダヤ人の群れの中に自らの顔写真を組み込んだ作品も出展。自分の出自と歴史の重みを作品を通して表現しかつ保存していこうとの試みは、多くの歴史の証人達の死や別離で思うようにはかどらず、「私の作品は私自身が弱体化した証拠」とも言うが、その一方、自分が居なくなっても他の芸術家達が自分と同じ事を言い、同じ事を試みてくれると信じてもいる。
今回のポンペイアでの展示会は、人々の歴史を記憶の中に留めたいという願いの表れでもある。多くの市民の名前が刻まれた電話帳を貼り付けたダンボールの塔は、「街そのものの復元ではなく箱庭だが、各市民がかけがえのない唯一無二、しかし、はかなく消えてしまうような歴史を持っている事を象徴する、市街地の迷路を通したフィクションだ」と言う。
展示会場はセレリア街93番のSESCポンペイアで、展示期間は6月29日まで。開館時間は火曜日から土曜日が10時から20時、日曜日は10時から18時までで入場無料。SESCポンペイアの電話は11・3871・7700だ。
インタビューに応じた人の国籍は様々で、アフリカや中東、日本などから来た人々が、各々の思いや歴史を語っている。