ニッケイ新聞 2014年4月12日
毎年、3月、もしくは4月、ブラジルではチョコレートが最も売れる季節となる。それは「パスコア(英語圏ではイースター)」の季節だからだ。
「復活祭」を意味するパスコアでは卵がひとつの象徴となるが、ブラジルでは、この時期、卵をかたどった大、小のチョコレートが製造され、これが毎年、スーパーマーケットの菓子売場などに暖簾のようにぶら下がっている。この姿はもはや季節風物詩だ。
スーパーなどで一番売れ筋のチョコ卵は小型のラグビー・ボールくらいの大きさだが、チョコ卵は各製造者によって、様々な個性に溢れている。基本的に中は空洞になっているが、そこに他のチョコレート製品を詰めたり、卵の殻の部分にナッツやクリームなどを加えてみたりなど、粋な工夫が見られるものだ。
そんなチョコ卵にはグルメも血眼となる。それを裏付けるように、サンパウロでのグルメの権威として知られるエスタード紙の料理ページ「パラダー」では、10日に発行された号で、10ページにも及ぶチョコ卵特集号を組んだ。
そこでは、パラダーを代表する料理評論家10人が勢揃いして、サンパウロを代表するパティシエたちが作ったチョコ卵を堪能し、それぞれのおすすめの逸品を表にして発表している。
しかも、ただ単に「美味しい」というだけではなく、味の基準ごとにページを分け、「ピュリスタ(カカオの素材に忠実)」「ノヴィダデイロ(斬新)」「ミニ(小型卵)」「クラシコ(正統派チョコ)」「サウドシスタ(懐かしの味わい)」「ロエドール(歯ごたえ勝負)」「インファンチウ(子供向け)」とタイプ別に分けるという凝りようだ。
そこではページごとに10個ほどのおいしそうなチョコ卵が紹介されているが、それらは1個100レアル(日本円で約4500円)以上するものが少なくなく、最高級のものだと195レアルというものもある。
各ページの下には、それがどこの店のチョコ卵かのクレジットがあるのだが、それはまるで、ファッション・グラビアの下に書いてある服のデザイナーのような趣きさえある。
日本だと、バレンタイン・デーがチョコレートの季節にあたるが、その際も、ここまでチョコにグルメにこだわるという話は聞かないもの。「たかがチョコ卵、されどチョコ卵」と言ったところか。