03年に始まったルーラ政権のエネルギー政策の中心的な存在とされ、「ブラジルはエタノールのOPEC(世界に名だたる主要生産国)になる」と言われた砂糖アルコール産業が、以来11年間に負債額が19倍に増え、窮地に立たされていると27日付エスタード紙が報じた。
ルーラ政権時代、地球温暖化への救世主ともいわれた砂糖アルコール産業は、「エタノールのOPEC」にとの前大統領の言葉やガソリンとエタノール併用型のフレックス車増産等に勢いを得、巨額の投資を行ってきた。ところが、03年以降の生産は倍増に止まる一方、負債が19倍に増えるという困難な状況に追い込まれている。
例えば、中西部での収穫量の72%に当たる4億2900万トンのサトウキビを加工する65のグループへの調査では、13/14農年の負債額は424億2千万レアルと予想され、前農年の負債額392億6千万レアルより8%増えた。
これらのグループで経営が良好なのは12。18は経営状態が非常に悪い。経営難のグループでは負債拡大に加え、サトウキビ供給者への支払いも滞っている。
このあたりの背景について14日付フォーリャ紙は、「ジウマ政権の経済政策が砂糖アルコール業界を史上最大の危機に追い込んだ」とのエリザベス・ファリナサンパウロ州サトウキビ加工業者連合会長の言葉を掲載した。
同会長によれば、ここ5農年でサンパウロ州では384のエタノール精製所中44が閉鎖に追い込まれ、33が会社更生法の適用を受けている。今年は休業する精製所は12で、20%の精製所は収入の30%が債務返済の利息等で消え、経営難で支援者を喪失。解雇した従業員も8万人に上る。
03~09年の原油価格上昇は国内のガソリン価格にも反映された上、ガソリン1リットル当たり0・28レアルの経済支配介入納付金(Cide)徴収がエタノールをより有利にした。フレックス車の生産促進政策も業界を後押しした。
ところが、岩塩層下の石油発見で政府の関心の中心が変化。2008年の国際的な金融危機で、赤字経営に陥った業界は負債が急増。政府は工業製品税の引下げ等で車の販売促進を図ったが、金の工面が困難な業界は設備投資等を縮小。これにより更新不可となったサトウキビ畑の生産性が落ちたところに干ばつ等の気候悪化が加わり、負債は更に拡大した。
生産減で価格が上昇すればガソリンとの価格競争は不利だが、インフレ再燃を嫌う現政権が行ったCide免税等によるガソリン価格抑制はエタノール業界を更に追い詰めた。砂糖価格高騰期は一息つけた業界を更に追い詰めたのは昨今のコモディティ価格下落だ。
エタノール増産を前提に採掘や精製用の施設建設を先延ばししたペトロブラスでは、国際価格の高騰を輸入燃料の国内価格に転嫁出来ず負債拡大という問題も発生。「現政権がエネルギー産業全体を窮地に追いやった」との言葉は重い。