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表現の自由か問題発言か=ブラジルで騒動の女性キャスター

現在、ブラジルの報道界で物議を醸している女性がいる。それがニュースキャスターのラケル・シェエラザーデだ。
シェエラザーデは2011年に、現在グローボ局についで視聴率第2位の局になっているSBT局の夜のニュースでメインキャスターをつとめてはじめた。その前までは北東部パライバ州の決して規模が大きいとはいえないローカルTV局のキャスターをつとめていたが、その報道の敏腕ぶりが、ブラジルを代表する司会者でSBT会長でもあるシルヴィオ・サントスの目に止まった。
シェエラザーデは自身の分析を歯に衣を着せない物言いで語ることで知られ、ネットでの投票などでは「現在のブラジル一のキャスター」とされることもあるが、それが必ずしも国民世論と一致しないことからたびたび物議を醸している。
その代表例が宗教絡みのトピックだ。昨年、下院の人権委員会の委員長に同性愛差別者として知られる福音派牧師でもあるマルコ・フェリシアーノ氏が就任した際、同性愛者団体を中心に猛抗議が起こり、世論の大半もそれを支持した際、彼女はフェリシアーノ氏が委員長であることへの支持を表明した。また、フェリシアーノ氏主催の福音派の集会で大学生の女性2人がキスをして抗議行動を行った際も「道端でなら良いが教会ではだめだ」と語った。
そして、それ以上の騒ぎが起こったのは今年の1月だった。リオで、窃盗を行ったと思われる黒人少年が、自転車やバイクの盗難防止用の錠で柱に繋がれるという、奴隷時代の風習を思わせる状態で見つかり、「人種差別だ」とする世論が目立っていたとき、「街の治安のためにそれが行われたのであるなら理解はできる」と語った。この際はSBTに苦情が殺到し、その発言が局の意向ではないと強調することで事態を収拾した。
これ以降、シェエラザーデへの風当たりは強くなった。ネットでは、「もっと彼女はやさしくなるべきだ」とばかり、彼女の写真を勝手に拝借した架空の妹キャラクター、「フッチ(Ruth)・シェエラザーデ」が作られ、優しく平和的な物言いで人気を集めるまでに至っている。
そして4月、SBTは世間からの反感を恐れ、シェエラザーデに対し、番組での自身の発言をカットするように要請し、SBTもその旨を公式文書で発表した。
だが、今度は逆に「表現の自由を制限している」との声が世論から飛び出しはじめた。これは遂には連邦検察庁まで飛び火し、SBTはシェエラザーデの発言自粛についての事情説明を求められるに至った。
この騒動を背景に、4月3週目発売の「ヴェージャ・サンパウロ」誌の表紙を飾ったシェエラザーデは、「喧嘩なら逃げないわよ」の見出しと共に力こぶを握るポーズで映っている。