プロのコックの料理を家で楽しむ人が増えてきた―。これまではレストランや大きなイベントに行かないと味わえなかったプロの料理。だが最近は、プロが客の家に出向いて調理の仕方を教えたり、パーティーの食事を作ったりという出張サービスが増えている。
プロのコックの出張サービス増加は、コックを目指す人が増えてきた事と、家庭に客を招いたりおいしい料理を食べたりする事に関心を持つ人が増えてきた事とが関係している。
マッケンジー大学で教鞭をとるマウリシオ・マルケス・ロペス・フィーリョ氏は、小さなイベントを担当する事は、新しくコックになった人達がレストランや大きなイベントを運営しなくても信用を獲得する事が出来る方法だと説明。出張サービスを希望する客が増えているため、同大学では小さなイベント開催依頼を裁くための責任を負う学生のグループさえ出来ているという。
コックのパトリシア・アボンダンザさんは、2008年にデード・デ・モッサという会社を立ち上げて、出張サービスの要望に応えている。同社の設立は「顧客から何が好きでどんな事をどんな雰囲気で行いたいかといった注文を受け、各々のケースに応じた対応をする」という理念から生まれたものだという。
同社は当初、家政婦などへの料理教室なども開いていたが、最近は家庭の主婦への料理講習が半数以上を占め、自分では習う意思がないという人の家庭では、パーソナルシェフの料理を楽しんでもらうという形のサービスを提供するという。
パトリシアさんは出張サービスが拡大しているのは「体に良い食べ物をおいしく食べたい人が増えた」からと指摘。同社の売上げは月3万~4万レアルになるという。
日本食の出張サービスを手がけた例はレアンドロ・フレイタスさんのカズ・スシで、夫婦だけのロマンチックな夕食から共同イベントまで様々なタイプの要望に応じる。
「数分でただの塊に変わってしまう手巻きは出さないし、出来上がった寿司が載った器をテーブルの上に配っていくだけのサービスもしない。その場で客の注文に応え、寿司について説明する事も出来る」と胸を張るフレイタスさん。「個々の客に厳選したサービスを提供する」事をモットーに、月平均50件のイベントをこなす同社では今年、180万レアルの収益を見込んでいる。
家庭でのパーティー用のイタリア料理を手がけるパエラス・ペペは、創業から15年。需要が増えた事でサンパウロ市イピランガ地区に店も開けたが、イベント関連の需要は年20%も成長している。
共同経営者のファビオ・ベネデッチさんによると、ホームパーティーでも、シュラスコやピッツァといったお決まりのメニュー以外のものを欲しがる人が増えているという。パエラス・ペペが受注するパーティーは最低25人だが、必要なら食器などの貸し出しも行いワインの専門店とも提携。昨年の売上げは320万レアルで、その30%はイベント関連の収益だという。(4月30日付エスタード紙より)