サンパウロ市エキスポセンター・ノルテで5日から4日間、スーパーマーケット産業で世界最大といわれる見本市「第30回フェイラAPAS」が始まった。パウリスタ・スーパーマーケット協会(APAS)主催。ジェトロ・サンパウロ事務所の日本ブースにはキッコーマン、南部美人、白鶴酒造、かねさなどが出展。その中で、「現地富裕層をターゲットに高級酒を狙っていきたい」と意気込む〃新参社〃も。兵庫県丹波市の西山酒造場では7年前に海外進出を始め、すでに25カ国と取引するという。西山周三代表取締役社長(41、兵庫)に海外進出の戦略を聞いた。
7年間で25カ国と軽快なスピードで市場開拓を進める同社だが、自ら赴いてルートを開拓したのはわずか5カ国、残り20カ国は向こうから代理販売の申し出があったという。英語で閲覧できるサイトはもちろんだが、海外のバイヤーをひきつけた一番の要因はなんと「デザイン」だ。
「7年前に輸出を始めた後発組だからこそ、特徴がないとだめ」と西山さん。日本酒といえば、筆書きの字体と渋い色合いが定番だが、同酒造では「ワインみたいに、ぱっと見て西山酒造とわかるデザイン」を目指し、父親の代から斬新なボトルやラベルにこだわってきた。日本酒のイメージが確立している国内では「中身がよければいい」と不評だったが、それが海外進出への追い風となった。「親父の言ったことは正しかった。国際的に認められた」と語る。
今回出展した清酒「小鼓」シリーズの純米大吟醸「路上有花 葵」は一本5400円で、酒部門初のモンドセレクション3年連続受賞商品という。一升瓶の平均単価が3920円という高級酒に特化した酒造であることを逆手に取り、「信頼のブランド」というイメージを売りこみ富裕層をターゲットに差別化を図る。
西山社長は「日系人よりも現地人。東日本大震災等の影響で止まっていたが、新たに掘り起こしにかかりたい」と意気込んでいる。
また日本ブースでは、先日あった和歌山県人会の創立60周年式典に出席した母県関係者から委託された井上梅干食品、JA紀南、丸惣、九重雑賀の4社による商品を出品。ジェトロの森下龍樹さんは、「梅製品を中心に出しているが、初日の感触では、はちみつ入り梅や梅ジャムなどが好評。当地の業者に相談したが、値段しだいではいけるのでは」と話した。
同フェイラには、国内外から6万8千人の来場を見込む。6万7千平米の会場に、計50カ国から500の業者が出展中。フェイラ、会議、講演会等を通してスーパーマーケット業界の発展と改善を目指している。
初の有機食品コーナーも=KORINブースも盛況
今年は有機、もしくは持続可能な方法で作られた商品の生産と消費促進を目的に、フェイラAPAS初の有機食品コーナー「エスパッソ・オルガニコ」(200平米)も設けられた。野菜や果物、ナッツ、化粧品など国内各地の商品が並べられ、タカオカ、MNプロポリスなど日系企業も参加した。
また有機鶏生産の先駆者として知られる「KORIN」のブースも盛況だ。世界救世教を母体として誕生し、今年で創立20周年を迎える。同社の鶏はすべて抗生物質不使用で、オルガニコの認定マーク入りは有機野菜をエサに使用。飼育や屠殺の際に動物の苦しみを極力回避すべきという動物福祉の基準を満たした認定マーク「CERTIFIED HUMANE BRASIL」も取得している。
売り上げの85%を占める有機鶏以外にも事業拡大中で、今回はシャンプーなどヘアケア商品を初紹介。同社管理責任者の守川レジナルドさん(46、三世)は、「約3カ月後に有機牛の販売も開始する。パンタナールで草だけをエサに放し飼いされた野生同様のメス牛で、肉は柔らかくオメガ3が豊富」と新商品をアピールした。