5月17日の夕方から18日にかけて、サンパウロでは市恒例の文化イベント「ヴィラーダ・クウトゥラル」が開催される。毎年この日は、音楽などを求めてサンパウロの中心部を何万人もの人たちが一晩中歩き回るほどの賑わいとなるが、今年の目玉のひとつは17日18時からの開幕を、サンパウロが誇るロックバンド、イラ!(IRA!)が2007年の解散以来初となる復活コンサートで飾ることだ。
イラ!は1980年代に起こったブラジルでのロック・ブームを語る際に欠かせないバンドのひとつだ。人気面では、同じサンパウロが生んだチタンスをはじめ、レジォン・ウルバーナ、パララマス・ド・スセッソ、バロン・ヴェルメーリョの「ブラジル・ロック四天王」には及ばなかったものの、切れ味鋭いギター・サウンドとサンパウロの若者の欲求不満を込めた歌詞で、大衆人気よりも実力を求めるリスナーから支持を集めていたバンドだ。
90年代に一度人気が落ちた後、2000年代に若手バンドからの尊敬もあり再注目されて活動を続けていたが、2007年に解散していた。
イラ!が活動を終える原因となっていたのは、中心人物であるヴォーカルのナジとギターのエジガルド・スカンドゥーラの仲違いだった。2人の間は解散間際に険悪となり、訴訟まで行なうほどだった。
そうしたこともあり、イラ!の再結成は絶望視もされていたが、昨年の10月にナジとスカンドゥーラが2人だけでイベントにゲスト出演するためのショーを行なったことでイラ!再結成の気運が高まった。
解散後、その腕前から様々な有名ロック歌手のバックでの演奏を任されていたスカンドゥーラだが、「誰と共演してもみんながイラ!のことを話すんだ」と語っている。
ナジも、たくさんの人から再結成を望む声を聞いた。「今回の再結成はなつかしさを求めたものでなく、ブラジルのロック界のためなんだ。80年代、90年代とブラジルからは良いバンドがたくさん生まれたけど、最近はダメになった。それは僕らの不在と重なっていた。だから何としてでも状況を変えたいと思ってね」とナジは語る。
イラ!はこのヴィラーダを皮切りにコンサート・ツアーを行ない、新作アルバムとDVDを作る予定もあるという。だが、今回は長年メンバーだったアンドレ・ジュング(ドラム)とリカルド・ガスパ(ベース)は参加せず、後任にもうひとりのギタリストを加えた5人組の新星イラ!で再スタートする。ベースにはスカンドゥーラの息子のダニエル・ロシャが加わった。
このヴィラーダを皮切りに、イラ!とブラジルのロックの歴史に新たな1ページが書き加えられそうだ。(12日付フォーリャ紙より)
タグ:サンパウロ