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第三世代の介護者増加=される側もする側も注意を

 サンパウロ総合大学(USP)が、サンパウロ市(以下、サンパウロ市)在住の高齢者の介護の約40%は第三世代の人によって行われているという調査結果をまとめた。
 少子高齢化に伴い、高齢者を高齢者が介護する例は増加傾向にある。サンパウロ市の場合、少子化と女性の職場進出などで若い人による介護減少は顕著で、USPが調査した362件中、60歳以上の人が高齢者を介護する例は38%見られた。
 サンパウロ連邦大学のナイラ・ドゥットラ・レモス氏は、老人医療の現場では、誰が介護される側で誰が介護する側かが一見しただけでは判別出来ない例も多いという。
 介護者の77%は女性で、介護される人との関係は、伴侶26・5%、息子や娘49・1%。それ以外は兄弟か姉妹3・7%、婿か嫁3・1%、孫3・4%、養子0・2%、それ以外の家族7・8%で、外部の専門家や家庭内労働者は6・2%だった。64・2%は介護者が同居しており、近くに住んでいるは29%。離れたところに住んでいて通ってくる例も6・8%ある。
 高齢者による高齢者介護の増加について専門家は、介護する側も介護される側同様、健康面に充分に注意する必要があるが、家族や行政がその部分に気づいていない例が多いと警告している。
 また、パラー州ベレンで開かれた高齢者医療の専門家の会議では、一人暮らしの老人介護には、国や州が家族によって依頼されている介護者への支払いを援助するなど、行政側からの働きかけが必要と強調された。
 サンパウロ連邦大学のリナ・カワゾエ教授は、専門の介護者を雇いたくても経済的に不可能だとあきらめている家庭も多いと指摘。高齢の介護者は一般の高齢者より肉体的、精神的に病んでいる事が多く、介護者が介護される人より先に亡くなる場合への懸念も大きい事も指摘された。
 60歳以上の介護者176人の85%は女性で平均年齢は71歳。最高齢者は86歳でアルツハイマーを患う妻を介護している92歳の男性だった。また、高齢の介護者の52%は5年以上孤軍奮闘しており、相手の介護をするために自分の健康を顧みる余裕すらない例も見られる。このような介護者は、社会との接点も少なくなり、うつ病になる、セルフイメージの低下といった問題を抱える事が多くなる。
 肉体的、精神的な負担が大きい事は怒りや悲痛感といった負の感情を呼び起こしやすく、問題解決のための社会的な支援や家族や友人からの援助、介護者同士のネットワークといったものが支えとなる例も多い。
 65歳の時アルツハイマーを発病した81歳の夫を、53歳の娘の助けを借りながら介護する73歳女性は、自分自身も骨折などを経験した他、うつ、高血圧などに悩みつつ奮闘中だが、「誰か門の所にいるよ」「トイレに行きたい」「カフェを飲みないな」とひっきりなしに訴える夫を、神の助けを求めながら介護していると語る。それを知ってか知らずか、夫は誕生日のケーキの最初の一切れをいつもそばにいてくれる妻に差し出したという。(11日付フォーリャ紙より)

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