「W杯で抗議行動は必ず再燃する。昨年6月同様、世界の目がブラジルに向けられたその時を狙って民衆は街頭に出る」。先日放送されたTVクルトゥーラの講演番組でデメトリオ・マギノリUSP教授はそう断言した。近年台頭した新保守主義(ネオコン)論陣の一人で、12年4月のエポカ誌が「新しい保守トロンボーン」の十人に位置付けた注目株だ▼マギノリいわく、ブラジルの政治経済体制は「コルポラチズモ(コーポラティズム)」を特徴とする。いかなる個人も、会社や組合、政党などの組織の一員としてしか政治への発言権が持てないというもの。社会を変えたい者は何らかの集団を組織し、その勢力拡大によって政治に影響を与えるとの方法論だ▼PT政権下ではこの傾向が過剰に出て来たと言う意味で、マギノリは現状を「スーペル・コルポラチズモ」と呼ぶ。W杯を前に過剰に多発する各種組合ストや「土地なし」「家なし」運動デモは、まさにその社会病状そのものだ▼昨年6月に続発した抗議行動では、デモ隊が連日テレビに映される様子を見た大衆が、自分たちも街頭に集まれば世界の関心を呼ぶことができると理解し、ネットとの連鎖反応で燎原の火の如く広がったと彼はみている▼80年代のジレッタス・ジャーや92年のコーロル罷免運動は政党が背景にいて組織化していたが、昨年6月は違う。政党や組合への嫌悪感が強い民衆が、コルポラチズモでは解決できない教育や医療などの現状への不満の声を、街頭で直接マスコミに発することで社会を変えようとしたと見ている。一カ月を切ったW杯だが、さて抗議行動は? (深)