「ブラジル・サッカー界に新たな美人審判登場」と話題になったのもつかの間、その女性審判が現在美人であるが故の問題に直面している。
フェルナンダ・コロンボ・ウリアーナさんは5月7日にサンパウロのモルンビー・スタジアムで行なわれたブラジル選手権のサンパウロ対CRB戦で、ブラジル・サッカー連盟(CBF)登録の審判としてデビューし、線審としての職務を果たした。
フェルナンダさんは23歳で、2010年にサンタカタリーナ州のアマチュアチームの試合でデビュー。その後同州サッカー協会の試合で経験を重ね、昨年はCBF女子チームの試合の審判として活躍。今年は全国区の男子チームの試合にも抜擢されるようになった。
いわば男ばかりの世界を実力で出世したわけだが、これまでサッカー・グラウンドにあまり馴染みのない金髪のロングヘアをはじめとした風貌はたちまち話題を呼び、ブラジル国内はおろか、日本をも含む世界中のサッカー・メディアで「ブラジルに新たな美人審判誕生」と報じられた。
だが11日に行なわれた全国選手権のクルゼイロ対アトレチコ・ミネイロ戦で、フェルナンダさんを試練が襲った。全国選手権のクルゼイロ対アトレチコ・ミネイロ戦で、クルゼイロが1対2の劣勢から追い上げを狙っていた後半41分、線審をつとめていたフェルナンダさんはクルゼイロに対しオフサイドの判定を下した。だが、それは誤審だった。しかも、「ここを超えるとオフサイド」の決め手となる、守備側の最後尾はまだ3メートル先という、内容の悪い誤審だった。
結局試合はそのままクルゼイロが敗れたが、ミナス・ジェライス州ベロ・オリゾンテでの伝統カードに敗れた腹いせも手伝ってか、クルゼイロのアレッシャンドレ・マット理事は「美人ならサッカーの審判なんてやらずに『プレイボーイ』のグラビアでポーズでも取っていればいいんだ」という性差別的な発言を行なった。
『プレイボーイ』云々という発言は、実際に同誌の表紙を飾った女性審判がいたこともあって出てきたものだが、これに対し、フェルナンダさんは「私は自分が美人だということさえ知らなかったが、そういうことで血祭りにあげられているのか」と反論した。
だが、フェルナンダさんはこの一つ前の全国デビュー戦でもオフサイドの判断に疑問を残し、ムリシー・ラマーリョ監督が苦言を呈しており、CBFはフェルナンダさんに審判としての講座を受けなおすよう指示すると共に、2節分、試合出場から外す処置を下した。
この処分に対し、「彼女が美人でなければこんな騒ぎも処分もなかった」と反論する世論もあるが、CBFは誤審を繰り返した審判には男女を問わず同様の措置を採っている。この措置はフェルナンダさんへの批判の矛先をそらし、彼女を保護する意図もある。
マット理事の発言はこれまで男性中心社会で来たサッカー界での女性の立場をうかがわせる問題だが、ここで挫折するか、偏見をばねにして女性審判への道を築くかはフェルナンダさん次第と言えるだろう。