1940~50年代のブラジル映画界を牽引したスタジオ、「ヴェラ・クルス」が復活の兆しを見せ始めている。
ヴェラ・クルスは、1949年にイタリア人企業家のフランコ・ザンパリ氏が出資して、サンパウロ市近郊のABC地区のBにあたるサンベルナルド・ド・カンポ市に建設したスタジオだ。
このスタジオからは、この当時のブラジルを代表したコメディアン、マッサロッピのコメディ映画や、サンパウロの演劇界を代表した大女優カシウダ・ベッケルの映画、そして同スタジオ最大のヒット作と呼ばれる、ブラジル北部の20世紀初頭の盗賊を描いた「オ・カンガセイロ」など、ブラジル映画史に残る貴重な映画を生み出している。
だが、ヴェラ・クルスは1953年から財政難に陥り、経営者を交代するなどして救済の努力をしたが、1976年には閉鎖状態となっていた。現在、スタジオの跡地は市場やイベントの開催会場として使われるだけのものとなっていた。
そのヴェラ・クルスをサンベルナルド・ド・カンポ市は蘇らせようと画策中だ。同市は10万平米に及んだこのスタジオ跡地を改築し、新たなヴェラ・クルスを建築して、市の発展のためのひとつの切り札にすることを考えている。
同市文化局の話によると、この新ヴェラ・クルスは、撮影スタジオや編集などのポスト・プロダクションのスタジオに加え、1000人規収容の劇場、さらに映画人育成のための専門学校を作る計画だという。
この新ヴェラ・クルスは改装して準備が出来次第、入札を行ない、経営企業を決める予定だが、落札した企業は向こう20年で毎年1億6千万レアルの運営費が必要となるという。
それはかなりの高額となるが、このヴェラ・クルスを後押しする材料もある。それは2012年に採択された「ネットワーク法」という法律だ。その法律には、ケーブルテレビにおける映画の30%は国産の作品でなければならない、と定められている。
ブラジルの場合、現在でも国産映画は市場全体の20%にも至っておらず、さらに90年代前半の頃には、映画公社がつぶれて国産映画が作れない時期もあった。「国産30%」という数字は、国内の映画産業にとってはかなり目標値の高い数字となる。
同市教育局のオズヴァウド・デ・オリヴェイラ・ネット局長は、「これによって、公共部門からも民間部門からも興味を持っていただければと思っている。私たちは映画や文化のための教育も行なうつもりだし、雇用の促進にもなるはずだ」と語っている。(20日付エスタード紙より)
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