ズバリ結論から言うと、この4年間で訪れたサンパウロ市の日本食店の中では、ベスト3に入るうまさだった。もし忍者が帽子をかぶっていたら、脱帽ものだ。
南米だけにエクアドルの首都を連想させる「きときと」という名前にも惹かれ赴いた。雰囲気は居酒屋というより洒落たカフェ。小笠原出身の30代の兄妹が経営している。「きときと」は富山方言で「新鮮な」という意味だそう。
当地定番の寿司・刺身はなく、「なめろう」「たこの土佐漬け」「納豆ソーメン」など、他店にはない一品物が豊富。「マンジューバの酢漬け」など現地素材を使った料理も気になるところ。値段は大半が20~40レ。
サラダ付きで20レ程度とお買い得のランチセットの一つ、牛すね肉のカレー(21レ)を頼んでみた。まろやかな口当たりで、肉も柔らかくなるまでしっかり煮込まれているので高齢者にも安心。引き込まれるようにガッガッとあっという間に完食。シッー、シッーと楊枝を使っていると、脳裏に稲妻のように違和感がこみ上げてきた。
「…何かが、おかしい。これはカレー味じゃない」。瞬時にテーブルの下に伏せ、数秒間、敵の出方を伺う。「あの味はビーフシチューのはず。最近日本では、こういうのもカレーというのか?」との脳裏に疑問が渦巻くが、「うまいのでシチューとしてオッケー!」と結論。
何気ない顔をして座りなおし、ねぎ、海苔、白ゴマたっぷりのチラピア丼も頂くが、癖がないし、タレもご飯も美味しい。「ブラジル人には薄すぎるのでは?」と思うくらいの味付けが日本人の舌にはちょうどいい。
砂肝、鴨など数種盛り合わせた「自家製燻製」(58レ)は特に絶品。まちがって牡蠣を床にポトリと落とした隊員は、「拾って食べたーい!」と絶叫した。
当地で日本食を「美味しい」と言った場合、ほぼ「ブラジルにしては」という暗黙の前提がつく。多少は現地化せざるを得ないだろうが、日本的水準で「美味しい」と言える店は実に少ない。
そんな暗黙の前提を見事に破ってくれた。果たしてこの調子で快進撃し、ブラジル人の新味覚を開拓か、もしくは道半ばで現地化か? 思えば珍しい近来の移住者だけに、本人たちの存在もまさに店名にピッタリ。
◆Quito Quito Izakaya
【営業時間】月~土の正午~午後11時半
【住所】R. Wisard, 193, Vila Madalena
【電話】11・3586・4730
【サイト】quitoquito.com.br
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