日系人にも正しい歴史教育を――。元航空幕僚長の田母神俊雄氏(66、福島)による講演会『新しい日本を創るには』が25日午後に行われ、雨天にも関わらず約450人が来場した。初来伯の田母神氏は、政治や経済、国防について熱く語り、皮肉の効いた冗談が発せられるたびに会場は大きく沸いた。ブラジル日本会議(徳力啓三理事長)の主催。前夜には、斉藤準一空軍大将とも6年ぶりの再会を果たしている。
開会式では小森広名誉理事長の挨拶の後、サンパウロ州議会を代表して羽藤ジョージ議員から感謝状が送られた。会場には佐野浩明サンパウロ州首席領事、本橋幹久県連会長らの姿もあった。
田母神氏が壇上へ上がると会場から大きな拍手が起こり、同氏は日伯両国旗へ一礼した後「どうも、危険人物の田母神です」とお決まりの挨拶で講演を始めた。
自虐史観を否定する歴史問題を中心に、国防体制や経済問題について滔々と語り、「安倍政権には右派野党が必要。2年後の国政選挙には立候補する」と宣言すると、会場からは歓声が起こった。
最前列で講演を聴いた山本茂さん(87、静岡)は「素晴らしい。僕が言ってほしいことを全て言ってくれた。今のままの日本ではどうにもならない」と興奮気味に感想を話す。
小休憩の後、参加者から田母神氏への公開質問時間が設けられ、「集団的自衛権について」「日本の移民政策」などの質問が行われた。「日系人へメッセージを」との質問に同氏は「日本の威信をかけて頑張って頂いた。日本人が信頼されていることはその結果。世界に対して日本人の良さを発信している事にもなっている」と話した。
最後には参加者から軍歌「歩兵の本領」をリクエストされ、「やっちゃいますか」と応じ、参加者の手拍子で美声を披露。退場の際も大きな拍手の中、両国旗へ一礼し退場した。
閉会式では徳力敬三理事長(72、三重)が「我々が日本のことを伝えなければ、次世代には歴史が何も残らなくなる」と思いを熱く会場に語りかけ、会への参加も呼びかけた。
名誉副会長で、元サンパウロ州議の下本八郎(78、二世)は「親から受け継いだ大和魂が目覚める素晴らしい講演だった」と感想を語り、「壇上に原稿は無く、全て彼の魂の言葉。日本を代表するような人になる」と評した。
講演会の後、田母神氏は同会議メンバーを中心とした夕食会に参加し、出席者約30人と親睦を深めた。「暖かく迎え入れて頂き感謝しています。これから日本を良くして行こうと思います」と挨拶、ブラジル日本会議から木彫りのトゥッカーノなどの記念品を受け取った。
田母神氏は講演前夜にも斉藤準一ブラジル空軍大将、柴田アゴスチーニョ空軍少将と夕食会を行っている。08年の訪日時に日本刀を贈られた恩義を返すために斉藤、柴田両氏からは、士官が身につける短刀が贈られ、田母神氏からは枯山水の掛け軸と屏風が両氏に贈られた。
講演前にはイビラプエラ公園内の移民開拓先没者慰霊碑を参拝し、福島県人会館での喜多方ラーメン祭りにも参加した。
26日にはエンブラール社を見学、27日にはイグアスの滝を見学した後、ロンドリーナを訪問し、28日に帰国する。