2005年に山崎千津薫監督がデビュー作の続編として作った『Gaijin -Ama me como sou』には、日本の役者や北米の日系俳優と共に出演した。その時ですら、ブラジル内に山崎監督が使いたくなる日系俳優は多くは育っていなかった。
「喜劇役者レナト・アラゴンが娘を主演させるために作った忍者映画では、僕が忍者の師匠役で世の中のためになることを教える筋書きだった」と思い出す。『O Guerreiro Didi e a Ninja Lili』(2008年)で、イタペセリッカ・ダ・セラ市の金閣寺が主要なロケ地となった子ども向け娯楽作品だ。
2011年には『汚れた心』(Coracoes Sujos)が公開され、そこでも金子は松田役を演じた。非日系のセルソ・アモリン監督も当時45歳、有望な若手監督として知られる存在だった。敢えて主要な役を日本の有名俳優に演じさせ、数少ない現地側として出たのが勝ち組の一人を演じた金子だ。
そして2014年に今回の柔道映画も非日系の若手監督だった。金子は「今回の監督もFAAPの映画学科を卒業したばかり、20代後半の監督でした」という。
今世紀にはほぼ5年に一本の割合で、日本移民をテーマにした映画が製作されてきた。しかもブラジル資本、非日系監督がどんどん手がけるようになってきた。製作者側からの日本移民に対する関心が広まってきた。
今回の柔道映画では主人公の柔道の師匠(馬欠場卯一郎)の役で出演した。「百年経って初めて日本人が持つ個性や特性を、ブラジル演劇界が認めるようになった」としみじみ述懐する。
特にこの柔道映画に関して金子は、「教育的な中身を持った良質な映画。この種の映画は今までブラジルにはなかった。とても良い傾向だと思う。柔道を通して人生の勝利者になる戦いを描いた物語で、とても良い役を貰いました」と喜ぶ。
主演カイオ・カストロは今年初め頃、「自分は本を読むのが嫌い」と発言して演劇人や脚本家などから総反発を食った若手だ。金子は「彼はあの役をやるために半年間、泊まり込みで柔道の修行をした。背負い投げ一シーンのために一日中、一生懸命に投げ続けた。ほんの数秒しか映画には使われないのにですよ。根性のある良い俳優です」と褒めた。
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「以前、僕がやるのがカボクロ的、戯画的な役ばかりだと嫌がる二世もいた。日系人が画面の中で馬鹿にされているように感じるんでしょうね」と振り返る。そんな中傷を受けても黙って受け流してきた。
「僕は、日本人の想いをブラジル社会に伝えるためには、どんな役でもいいからメディアに出続けなければならないと考えた。笑われても映像の世界にいれば、日本人の存在感を表すことができる。僕は絵描きとして自分の世界を持っている。だからこそ分かるんです。テレビや映画の影響力はすごいんだと」。
『Gaijin』から35年が経った今、非日系監督が競って日本移民を描き、日系家族を組めるぐらいに俳優が増えた。「役の変遷は、ブラジル人がより深く日本人を理解した証拠ではないでしょうか」。(終わり、深沢正雪記者)
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